②建物の代替

現行の建築基準法は、極めてまれな地震(震度6強以上)に見舞われた場合、建物の倒壊を防ぎ人命を保護することを目的としています。つまり、それらの大地震によって、建物にある程度の被害が起こることもあり得ます。そのため、建物を継続して使用できない場合の準備を進めておく必要があります。

1)自社の他の拠点を活用する
自社の他の拠点の建物被害が軽微であれば、その拠点で重要業務を継続します。

2)在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務を実施する
従業員が、自宅やサテライトオフィスで勤務することも対策の一つとなります。ただ、在宅勤務であれば、書類が電子化されており、それが被災後もアクセスできる状況にある、また業務に使用するパソコンが従業員一人一人に配備されているなど、準備を事前に済ませていることが前提となります。

③原材料・部品の代替

原材料・部品については、まず自社内の原材料・部品が被災によって使えなくなることが考えられます。この場合の対策は、自社建物の耐震性を確保して、そこにある原材料・部品を災害から守ることになります。

一方、原材料や部品の調達先が被災することによって自社への供給が途絶える場合に備えるには、次のような対策が考えられます。

1)在庫の量を見直す
自社内の在庫量を増やすことで、調達先の事業が復旧するまで待つ形をとります。

2)調達先を複数化する
一つの事業者から調達している場合は、二つ以上の事業者から原材料や部品を調達することを検討します。まず代替調達先を検討しておくことから考えるとよいでしょう。

3)調達先と連携して、双方の事業継続能力を向上させる
自社の事業は、自社の力だけで継続することはできません。調達先企業と連携して、事業継続計画に取り組むことを検討することが重要です。

この原材料・部品に関する代替戦略には課題もあります。例えば、在庫を増やすためには、その資金が必要となり、また保管場所など追加費用が必要となります。また、調達先を複数化することにより、1社調達で得られるコストメリットが失われる可能性もあります。

言い換えれば、これらの代替策には、平常時に追加の費用が必要となる場合が多いことから、平常時と緊急時のバランスなどを検討しつつ、経営者が最終的に判断する必要があります。

【ここがポイント】

BCPでは、被災時に欠けた経営資源をどのように補うかという代替戦略が極めて重要です。そしてそれらの代替戦略は、平常時に整備しておくことが求められます。

1. 従業員の代替は、業務の標準化とマニュアル化が必須となる
2. 建物は、まず防災活動の段階で十分な耐震性を確保する
3. 原材料・部品は、在庫量の見直しや調達先の複数化を検討する