2013/01/25
誌面情報 vol35
日常的に降灰被害を経験している鹿児島市では、どのような対策を講じているのか。市の担当者に市民生活も含めた降灰対策について、Q&Aをまとめてもらった。なお、ここ数年における鹿児島市での降灰量は1回の噴火あたり数ミリ以下となっている。
Q1 降灰に備えて、事業所や家庭で何か事前に準備しているものはあるか?

A 竹ぼうきや角シャベルは個々で用意している。鹿児島市では宅地用として、各家庭に「克灰袋」を配布している。降灰を収集した「克灰袋」は指定の収集場所に搬出すると、収集車が回収して、廃棄物処分場等に埋め立てられる。「克灰袋」は市が作成し、市民や商店街などに無料で配布している。克灰袋がない場合はレジ袋を二重にして出すこともできる。一袋当たり20㎏まで入れられるが、宅地内降灰指定置場まで持っていかなくてはならないため、〜12㎏程度が適当。10 店舗などは手押し式の降灰除去機を所持しているところもあるし、敷地が広い事業所は小型の降灰除去機なども効果的かもしれない。どちらも一般に市販されている。
Q2 降灰時に、市民が外出する時には、どのような服装で、どのような対策をしているか?
A
突然の降灰時には、ハンカチなどで口元を覆ったり、日傘などをさす人もいる。屋内

に退避する人もいる。外出する際は、女性はマスクを着用したり、傘をさす人もいるが、男性ではあまり見られない。降灰対策としてゴーグルやレインコートを着用している人は、ほとんど見たことがない。
Q3 ライフラインの影響について、送電線の断線・ショートによる停電や、浄水場・下水道への影響は?
A 南岳山頂火口の活動が活発な時期には降灰が原因で電線が切れる被害が発生している。水道施設については、ろ過池の水に降灰があり、濁度が上ったために取水を停止する状況(長期間続いた場合は給水停止になることもある)があるので、水道施設に覆蓋を設置する計画がある。下水道が詰まるような状況はないが、降灰が側溝に溜まり、流れなくなることがあるので、道路管理者が定期的に側溝の降灰を除去している。
Q4 交通の影響について、鉄道や道路への影響は?
A 最近の事例では大量の降灰時にJRの分岐器に降灰が堆積して、運休したことがあるが、路面電車や路線バスは運休しなかった(通行規制や速度規制を行う場合はある)昨年はJR。が2回運休している。自動車等への影響については、多量に降灰があると視界不良のため、ライトを点灯したり、ワイパーを動かしたりして視界を確保することがある。島内で多量に降灰があるとスリップ事故につながることもある。高速道路は桜島の降灰が多量に飛散する場所にはないが、仮に多量に降灰があった場合は、一般道と同様に、通行規制や速度規制で対応される。なお、道路上の降灰除去については、国・県・市または民間事業者がそれぞれ降灰除去専用の車両や散水車を所持しており、それぞれの所管の道路の降灰除去を行っている。市道においては3日以内に道路降灰を除去する計画となっている。
Q5 建物内への降灰侵入防止策はどうしているか?
A 降灰時には建物内に火山灰が入らないよう窓を閉める。エア降灰仕様のものなどは聞いたことはない。降灰時は洗濯物を外に干すことはできないので、サンルームを作ったり、ベランダをガラスサッシなどで囲ったりする家もあるようだ。
Q6 電子機器についてTV、パソコン、レジなど精密機器の保護の必要があるか?
A 電子機器を降灰から保護しているという話は聞いたことがない。建物の窓を閉めていれば大量の火山灰が入ってくることはないため、屋内の電子機器の環境は降灰のない地域と比べて、あまり変わりないと思う。降灰の影響による電子機器の故障も聞いたことはない。
Q7 降灰の健康被害として、行政としてどの様な指導をしているのか?
A 国・県・市において、昭和47年度から平成20年度まで、降灰や火山ガスの影響について降灰検診を実施していたが、急性的な目のかゆみや喉の痛みなどの訴えはあるが、慢性的な疾患(ぜんそくや気管支炎など)の報告はない。
誌面情報 vol35の他の記事
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方