独自のアイデアで情報共有

今回の出動で、平野石油も学んだことは多い。その1つが、効果的な地図の活用による電力会社とドライバーとの情報共有手段だ。

「初めは、Google mapを印刷したものを渡され、『ここに行ってくれ』と要請されたが、被災して通れない道もあり、土地勘のない私たちがそこまでたどり着くのは難しかった。加えて、いつまでに何リットル必要なのか、給油に必要な装備は何なのか、そのような情報を関係メンバーで共有する必要が出てきた」(平野氏)

益城町の交通規制の様子 (画像提供 : 平野石油)

現場では下図のように、地図に必要事項を記入できる欄を設置。被災でカーナビが役に立たなかったため、ドライバー同士が情報交換できるよう、一度行った場所には目印や通行止めの情報なども地図上に書き込むようにした。

写真を拡大  地図に必要事項を記入できる欄を設置

「例えば、補給先がホースが30m必要な場所と先に分かっていれば、業者の選定もそれに合わせたものにできる。私たちは配送のプロなので、現地でさまざまな采配をとることができる」(同氏)


必要なのはコーディネーターとコントローラー

作業詰所では、平野石油の配車のベテラン社員がコントローラーとして采配をふるった (画像提供 : 平野石油)

平野氏は「熊本地震で感じたことは大きく2つ。1つは地域のSSだけを燃料確保先とするのは非常に危険だということ。そしてもう1つは、燃料を配送、そして給油する様々な燃料配送業者を取りまとめる現地のコントローラーが必要だということだ」とする。

熊本地震では東日本大震災と違い、製油所に大きな被害はなかったが、やはり被災により道路状況が悪化し、一時的に燃料不足が発生した。被害の大きかった益城町と南阿蘇村では、23カ所あるSSのうち、4月23日時点で営業できたのは8カ所にとどまっていた。やはり県外を含めた燃料供給先の複線化とコーディネーター会社との協力関係構築は、災害時の燃料調達における重要課題といえるだろう。

また、現地のコントローラーについては今回、同社の配車を担当するベテラン社員が当たった。配車とは、普段から全ての車両の性能や装備を見極めつつ、どこに何を届ければ最も効率が良いかを考える業務だ。もちろん、無理な運転などによる2次災害を誘発しないよう労務管理にも気を遣う。

同社は、普段から培った広域ネットワークと、現地でのさまざまなアイデアや現場のコントロールにより、159キロリットル、ドラム缶に換算すると実に795本分に相当する現地への燃料供給を実現したのだった。

平野氏は「全国の燃料配送業者のネットワークは一朝一夕にできるものではなかったが、これまでの取引関係の中で、いろいろな会社とお付き合いさせていただき、ドライバーや車両などのさまざまな情報を把握していることが当社の財産。皆さんのハブになることで、これから来るであろう南海トラフ地震や首都直下地震などの大災害に備えていきたい」と話している。

(了)