2016/07/19
防災・危機管理ニュース
独自のアイデアで情報共有
今回の出動で、平野石油も学んだことは多い。その1つが、効果的な地図の活用による電力会社とドライバーとの情報共有手段だ。
「初めは、Google mapを印刷したものを渡され、『ここに行ってくれ』と要請されたが、被災して通れない道もあり、土地勘のない私たちがそこまでたどり着くのは難しかった。加えて、いつまでに何リットル必要なのか、給油に必要な装備は何なのか、そのような情報を関係メンバーで共有する必要が出てきた」(平野氏)
現場では下図のように、地図に必要事項を記入できる欄を設置。被災でカーナビが役に立たなかったため、ドライバー同士が情報交換できるよう、一度行った場所には目印や通行止めの情報なども地図上に書き込むようにした。
「例えば、補給先がホースが30m必要な場所と先に分かっていれば、業者の選定もそれに合わせたものにできる。私たちは配送のプロなので、現地でさまざまな采配をとることができる」(同氏)
必要なのはコーディネーターとコントローラー
平野氏は「熊本地震で感じたことは大きく2つ。1つは地域のSSだけを燃料確保先とするのは非常に危険だということ。そしてもう1つは、燃料を配送、そして給油する様々な燃料配送業者を取りまとめる現地のコントローラーが必要だということだ」とする。
熊本地震では東日本大震災と違い、製油所に大きな被害はなかったが、やはり被災により道路状況が悪化し、一時的に燃料不足が発生した。被害の大きかった益城町と南阿蘇村では、23カ所あるSSのうち、4月23日時点で営業できたのは8カ所にとどまっていた。やはり県外を含めた燃料供給先の複線化とコーディネーター会社との協力関係構築は、災害時の燃料調達における重要課題といえるだろう。
また、現地のコントローラーについては今回、同社の配車を担当するベテラン社員が当たった。配車とは、普段から全ての車両の性能や装備を見極めつつ、どこに何を届ければ最も効率が良いかを考える業務だ。もちろん、無理な運転などによる2次災害を誘発しないよう労務管理にも気を遣う。
同社は、普段から培った広域ネットワークと、現地でのさまざまなアイデアや現場のコントロールにより、159キロリットル、ドラム缶に換算すると実に795本分に相当する現地への燃料供給を実現したのだった。
平野氏は「全国の燃料配送業者のネットワークは一朝一夕にできるものではなかったが、これまでの取引関係の中で、いろいろな会社とお付き合いさせていただき、ドライバーや車両などのさまざまな情報を把握していることが当社の財産。皆さんのハブになることで、これから来るであろう南海トラフ地震や首都直下地震などの大災害に備えていきたい」と話している。
(了)
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/12/05
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方