デングウイルス感染病で特徴的な症状は

デングウイルスに感染した場合、約50~80%は発病せず無症状のまま終始する(不顕性感染)と考えられています。

1.デング熱
デングウイルスに感染して発病した患者の大多数にみられる症状は、デング熱と呼ばれる一過性熱性疾患です。すなわち、ウイルス感染後3~7 日目に、突然の発熱で始まり、頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛、関節痛が続き、食欲不振、腹痛、便秘を伴うこともあります。発熱のパターンは二峰性になることが多いようです。発病後、3~4日後より胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面へ広がります。鼻や歯茎からの出血、点状の出血、あざ状の内出血も起きます。これらの症状は1 週間程度で消失し、通常後遺症なく回復します。

2.デング出血熱
デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同じ症状の経過を示した患者の一部が、突然、血漿(けっしょう)漏出と出血を主症状とする重篤なデング出血熱に進むことがあります。症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけた時期に現れるのが特徴です。放置すると死に至ることがあります。

患者は不安、興奮状態となり、発汗がみられ、ひどい腹痛または執拗な嘔吐、皮膚の赤い斑点、鼻や歯茎の出血、吐血、タール状の黒い便、眠気や興奮状態、肌の血色が悪くなったり肌が冷えたり湿っぽくなることがあります。呼吸困難を伴うこともあります。

高率に胸水や腹水がたまります。また、肝臓の腫脹、血小板減少、血液凝固時間延長がみられ、細かい点状出血が多くの例で確認されています。さらに、10~20%の例で鼻出血、消化管出血などが見られます。

診断:ウイルス検査が必要
デング熱の疑われる症状が発現した場合、ウイルス検査を行い最終的な診断をする必要があります。採血して、デングウイルスに対する抗体、デングウイルス抗原を検出する方法がありますが、検査のできる機関は限定されています。しかし、デング熱流行地から帰国して、デング熱が疑われる症状が出た場合、あるいは海外渡航歴がなくても本病が疑われる症状が出た場合、医療機関で受診することが必要です。

治療:根本的な治療薬はなし
本病に対する根本的な治療薬は開発されていません。通常のデング熱の場合には、対症療法としての輸液や鎮痛解熱剤投与程度にとどまることがほとんどです。ただし、解熱鎮痛剤としてサリチル酸系統のものではなく、アセトアミノフェンが勧められています。

重症なデング出血熱の場合には、循環する血液量の減少と、血液の濃縮が問題になりますので、適切な輸液療法が重要となります。時には、酸素投与や重炭酸ナトリウムの投与なども追加されます。

予防:流行状況の事前確認が大切
デングウイルス感染病の危険な国に出掛けなければならないときには、渡航先のデングウイルス感染病の流行状況の情報を、渡航前に十分に得ておくことが何より必要です。蚊が媒介する注意を要するウイルス性の感染病は、デングウイルス感染病以外にも多数あることを認識しておくことも必要です。

渡航先では、蚊に刺されない工夫が重要です。蚊に刺されない方法として、長袖、長ズボンの着用、昆虫忌避剤の使用、就寝する際には昆虫忌避剤を担持した蚊帳(かや)の使用などが考えられます。ワクチンの開発はまだのようです。
地球温暖化の進んでいる現在、日本国内においても、蚊の駆除の徹底化は従来よりも重要になっています。

(了)