小売業最大手のイオンは、昨年3月11日の東日本大震災により、被災地エリアにあるグループ企業の店舗の半数以上が営業停止に追い込まれた。津波による被害が甚大な沿岸部では、イオン多賀城店やイオン気仙沼店など一階部分が水没した店舗もあった。厳しい状況の中、同社はグループ全体の指揮系統を一本化し、災害対応を一元的に管理した。さらに、事業継続に向けたグループ各社の横断的な連携により、震災から2週間で95%の店舗の営業を再開させた。
 

写真を拡大イオン気仙沼駐車場

■指揮系統を一本化

イオングループは、持株会社であるイオン株式会社を筆頭に約180社で構成し、中核事業であるGMS(総合スーパー)事業、SM(スーパーマーケット)事業に加え、ディベロッパー事業や銀行・保険サービスなどの総合金融事業、中国・アセアン事業、コンビニエンスストアなどの戦略小型店事業、ドラッグ・ファーマシー事業など12の事業を展開している。 

東日本大震災では、当日の15時にイオン株式会社の幕張本社にグループ全体の対策本部を設置し、指揮系統を一本化して災害対応にあたった。17時には、仙台市にあるイオンリテール東北カンパニー事務所に現地対策本部を設置し、本社の対策本部とテレビ会議を通じて情報を共有しながら、グループ各店舗の被災状況や従業員の安否確認、自治体などから要請のあった支援物資の把握など一元的な管理にのりだした。震災当日の夜には本社からスタッフ12名を現地に派遣して調査に当たらせている。 

震災直後から同社の被害状況や復旧対応について対外的に発信してきたイオン株式会社コーポレート・コミュニーケーション部シニア・マネージャーの向原利行氏は「迅速に災害対応を実現するには、正確な状況の把握とトップダウンの意思決定が重要です。4月末まで臨時体制を敷き、週に1回、グループの各企業との情報交換の場を設け、被災地の状況に応じた対策を協議して対応しました」と当時の状況を振り返る。 

震災の翌日、東北地区ではグループ企業であるコンビニエンスストアのミニストップを含む449店舗のうち、161店舗しか営業ができない状態だった。多くは、震災後に東北地方一帯で発生した停電の影響によるものでした」(向原氏)。それでも全体に建物の損壊は少なく、ほとんどの店舗では復旧に早くから取り掛かることができたという。震災から翌々日の13日には、約70%の店舗が営業

を再開した。その後も順調に復旧し、約2週間後の3月25日には約95%が営業を再開できた。