2012/01/25
誌面情報 vol29
現在、ISO で策定中の危機管理に関する規格は 10 以上ある。民間から公的機関まで、さまざまな組織を 対象にしている。まずは、ISO の基本的な枠組みと規格開発の背景を見てみよう。
品質マネジメントシステム(ISO9000 シリーズ) や環境マネジメントシステム(ISO14000 シリーズ) などで、すでに国内でも馴染みが深い ISO 規格。 発行するのは、民間の非政府組織である ISO(国際 標準化機構:本部スイス ジュネーヴ)だ。
同組織では、電気分野を除く工業分野について、 国際的な標準である国際規格(IS)を策定している (電気分野については IEC:国際電気標準会議が国 際規格を開発) 。その危機管理に関する規格が昨年 末から量産体制に入った。 先 陣 を 切 っ た の は 昨 年 11 月 に 発 行 さ れ た ISO22320 (危機管理−危機対応に関する要求事項) 。
今年7月∼ 8 月には、事業継続マネジメントシステ ム(BCMS)規格の ISO22301 も誕生する。このほ かにも、官民連携、演習・テスト演習・テスト、用 語、緊急事態における集団避難など、10 以上の規 格開発が進行中だ。 そもそも ISO では、主要な産業分野の標準化を、 TC(Technical Committee)と呼ばれる専門委員 会の下で行っている。TC 1(ネジ)や TC 2(ボル ト・ナット類)から TC 229(ナノテクノロジー) までがあり、 危機管理は TC223 (社会セキュリティ) が担当している。
■出発点は 9.11
TC223 の出発は、2001 年9月 11 日に米国で発生 した同時多発テロまでさかのぼる。9.11 以降、テロ 対策や、あらゆる災害への対策を強化していた米国 では、国家や自治体などの組織体系を見直すととも に、民間部門の危機対応力を高めるための仕組みと して、国際標準化機構(ISO)に対して、災害対応 力の向上に関する国際規格を開発することを呼びか けた。米国内で発生するテロや災害だけでなく、ビ ジネスがグローバル化した現在では、国際的な危機 対応力を向上させないと、米国だけではそれを達成 できないためだ。
米国の働きかけを受け、ISO では 2006 年4月に伊フィレンツェで災害対応力向上の国際規格 を実現するための国際ワークショップ協定 IWA (International Workshop Agreement)にもとづく 会議を開催し、そこで米国規格協会(ANSI)が暫 定規格を作ることを提案した。ちょうどこのころ、 英国や日本、豪州やイスラエルでも、BCP の国内 規格やガイドラインを作っていたことから、それぞ れの参加国が規格やガイドラインを持ち寄り、国際 規格の大きな枠組みについて議論した。 ちなみに、日本の内閣府が事業継続ガイドラインを策定したのは 2005 年8月のことだ。
この IWA 会議に参加した東京海上日動リスクコ ンサルティングの岡部紳一氏によると、会議では最 終的な合意まで取り付けることができず、ISO の正 規な策定手順にしたがって、事業継続の国際規格を 1から策定することになったのだという。 それを担当する専門的な組織として指定されたの が社会セキュリティ委員会 TC223 だ。
現在、TC223 には、WG 1から WG 5まで5つ のワーキンググループがあり(図1) 、民間企業の事 業継続力だけでなく、公的機関も対象にした規格ま で幅広く検討・開発が行われており、社会全体のセ キュリティ向上を大きなミッションに掲げている。 WG1 ∼ WG 5までの活動内容と、それぞれが開 発している規格は次の通りだ。
誌面情報 vol29の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方