私どもが立てた「復興ビジョン」は、「社員と施工パートナーの安全と生活を確保する」「ホームオーナー(OB客)の復旧を最優先する」「事業計画は白紙とする」ということでした。ゴールデンウィークも迫るなか、社員達は使命感から「出社させてほしい」と言いましたが、社員の健康状態を優先し、2班に分けて強制的に休ませました。

私の方では、金融機関を回って「1億の赤字を出しますがいいですか」と事業計画変更を説明しました。こうすることで、社員にも堂々と「行け」と支援したわけです。また、日々変わる情報を正確に把握する為、社員の疲労度等を確認するために毎日会社を周ってヒアリングすることを欠かしませんでした。もちろん私自身の健康状態にも配慮しました。

弊社では普段、アフターサービスの電話がかかると、2日以内に訪問して処理します。そんなサービスを売りにしている会社が「いつ行けるか分かりません」としか答えられないことは、社員にもお客様にとっても非常なストレスです。多くのお客様からの厳しい電話に応じる女性社員の心も折れそうになります。そうしたクレームに対しては部長以上の男性社員で説明し、お互いの心のケアをしました。数カ月は弊社の社員は街に飲みに行くこともできないため、若手社員が中心になって会社の会議室で飲み会を開催しました。これはとても盛り上がり、次へのエネルギーになりました。

そして、日頃のお付き合いのある方々に、一番遠いところでは秋田から屋根の補修に来ていただきました。多くの素晴らしい技能を持った職人さんが支援に動いてくださいました。

そうした感謝を込めて、危機管理専門サイトの「リスク対策.com」と、大手住宅設備メーカーのLIXILの力を借りて、私達の経験をヒアリングしてもらい、「災害対策の手引き」というBCPマニュアルを作成してもらい、無料で公開させていただきました。私どもの経験の集大成がこの中に含まれています。

(了)