東日本大震災における被災者の情報ニーズとメディア利用行動

寄稿 メディアアナリスト 井坂公明

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の被災地では、被災者の立場からみてどのような段階で、どのような情報が求められ、どのような伝達手段(メディア)が役立ったのか─。

日本民間放送連盟・研究所が昨年実施した「東日本大震災時のメディアの役割に関する総合調査」を手掛かりに、被災者の情報ニーズとメディア利用の実態を分析した。それによると、震災発生時・直後には緊急地震速報や大津波警報などの防災情報が必要とされ、緊急地震速報の周知には防災無線と携帯・パソコン(PC)が、大津波警報の周知には防災無線とラジオが大きな役割を果たした。大津波警報については、防災無線が機能した地域と、そうでない地域に明確な差が見られた。また、全体的に携帯やインターネットなどの通信系メディアは、地震や津波による停電や断線、中継基地局の被災が原因で、1週間後ごろまでは貢献度が低い傾向にあったことも判明した。

民放連の調査は「被災地受け手調査」と「被災地送り手(メディア事業者)調査」で構成、2011 年7月から10 月にかけて実施された。本稿では、受け手調査の内容を紹介する。

◇発生時の所在地は自宅と職場・学校が8割

まず、11 年3月11 日14 時46 分ごろの地震発生時の所在地は、被災の程度が比較的重かった人が対象となっている仮設調査では、「自宅」が55.0%と最も多く、次いで「職場・学校」24.4%、「職場・学校以外の屋内」8.2%、「移動中」5.6%、「屋外」5.2%の順。被災程度が比較的軽かった人が対象のネット調査では「職場・学校」39.6%、「自宅」38.5%、「職場・学校以外の屋内」7.3%、「移動中」6.6%、「屋外」3.2%だった。どちらも「自宅」と「職場・学校」を合わせると約8割に上った点が共通している。

 緊急地震速報の認知率(「聞いた」との回答)は、仮設調査で40.6%、ネット調査で38.0%とほぼ同水準。地震速報を聞いたメディア・情報源は、仮設調査では「防災無線」と「携帯電話・PC」がそれぞれ35.5%でトップ。以下「ラジオ(カーラジオを含む)」17.7%、「テレビ(ワンセグ、車載テレビを含む)」16.7%など。一方、ネット調査では「携帯・PC」が74.6%で断然1位。次いで「テレビ」19.0%、「ラジオ」9.9%、「防災無線」6.3%などの順だった。

◇大津波警報の認知率は防災無線が左右

大津波警報の認知率は、仮設調査では57.0%、ネット調査では39.8%にとどまった。今後認知率をどう引き上げていくかが大きな課題の1つとなろう。大津波警報を聞いたメディア・情報源は、仮設調査では「防災無線」が49.5%と約半数を占めた。次いで「ラジオ」21.4%、「(家族や隣人などからの)口コミ」15.1%、「自治体などによる広報車、口頭での呼び掛け」13.7%の順。ネット調査では「ラジオ」40.0%、「テレビ」38.9%、「防災無線」27.8%、「自治体などによる広報車、口頭での呼び掛け」12.5%の順だった。