農林水産省は、コメの価格高騰を抑えるため、政府備蓄米の入札を始めた。ただ、今回放出する15万トンは「消費者に人気のあるコシヒカリなどのブランド米が少ない」という指摘が流通市場の関係者から聞かれる。店頭に並ぶ備蓄米が消費者ニーズに合わないと、国が期待する価格の押し下げ効果は限定的になるとの見方が出ている。
 15万トンの内訳は、2024年産が10万トン、23年産は5万トン。24年産では、新潟産コシヒカリ(1800トン)や秋田産あきたこまち(4600トン)、宮城・福島産などのひとめぼれ(1万3000トン)といった、家庭用で人気の高い銘柄も含まれる。しかし全体量から見れば、消費者が好む銘柄の割合は低いというのが、市場の評価だ。
 人気のあるブランド米は、スーパーなど小売業者同士で限られた量を分け合う形となる。このため、量販店で実際に販売される段階では、わずかにとどまることが予想される。関係者からは「ブランドにこだわる消費者は多く、数少ない人気銘柄はすぐに売れてしまう。大半の消費者が値下がりを実感できるかは疑問」(流通業者)との声が上がっている。
 一方、ブランド米以外は、多くが外食産業などの業務用米として取引され、小売価格下落への効果は乏しいとみられている。
 総務省が発表した2月の小売物価統計調査によると、東京都区部のコシヒカリ5キロの価格は4363円と、前年同月に比べ8割ほど高い。「備蓄米は薄く広く行き渡るだけで、店頭で安くなってもせいぜい数百円程度」(コメ集荷業界幹部)となる公算が大きい。 
〔写真説明〕神奈川県内の倉庫で保管されている政府備蓄米=7日(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)