【北京時事】中国政府は2025年の経済成長率目標を3年連続で「5%前後」に据え置いた。人口減などを背景に潜在成長率は4%台に落ち込んでいるとされ、李強首相は達成に「多大な努力が必要」と訴えた。米国との貿易摩擦が激しくなる中、国民の心理悪化を避けるためにも、あえて強気の姿勢を示したもようだ。
 「外部環境は厳しさを増し、貿易や科学技術に大きな衝撃を与える可能性がある」。李首相は5日の政府活動報告で危機感をあらわにした。トランプ米政権は1月の発足以来、既に対中関税を2度、計20%引き上げた。トランプ氏は60%の関税を課す考えも示しており、経済成長をけん引してきた外需の先行きには不透明感が漂う。
 内需も予断を許さない。中国では家計の主な資産に当たる不動産の価格が下落し、個人消費に強い下押し圧力が加わっている。政府は今回、消費てこ入れに向けて財政支出を拡大する方針を打ち出したが、これまで消費刺激策の柱となってきた自動車や家電の買い替え支援に関しては「需要の先食い」(大和総研の齋藤尚登主席研究員)との声も上がっている。
 李首相は25年の成長率目標について「中長期発展目標とひも付けた」と説明した。習近平国家主席は20年の演説で、35年までに国内総生産(GDP)を倍増させる意向を示しており、これを考慮した可能性が高い。一方、国際通貨基金(IMF)は25年の成長率が4.6%になると予想している。
 デフレ懸念が強まる中、25年の物価上昇率目標は「2%前後」と、前年から引き下げられた。24年は前年比0.2%の上昇にとどまっており、実態との隔たりを指摘する声が出ていたことなどを踏まえたとみられる。 
〔写真説明〕中国の第14期全国人民代表大会(全人代)第3回会議が開かれる人民大会堂=4日、北京(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)