住宅設備機器販売などを手掛ける「橋本総業」(東京都中央区)が、委託する運送事業者に時間外労働の料金を支払っていなかったなどとされる問題で、公正取引委員会は12日、同社が提出した改善計画を認定した。独禁法上の「確約手続き」に基づく措置で、同社は運送業者約25社に総額約3800万円を支払うことなどを約束した。
 独禁法では荷主による物流業者への不公正な取引を規制する「物流特殊指定」を規定しており、同指定で初の行政処分となった。公取委が改善計画の実効性を認めたため、同社には排除措置命令は出されない。
 公取委によると、同社は遅くとも2017年7月以降、仕入れた住宅設備機器などの配送を委託していた運送業者に対し、時間外労働の料金を支払わなかったり、業者側と事前に定めた代金から「割戻金」名目で一方的に減額したりしていた。
 同社は自社の配送センターでの荷物の積み込み作業などを無償で行わせた他、公取委の試算によると、推定される1時間当たりの賃金が最低賃金を下回っており、「買いたたき」も行われていたと判断した。
 公取委は今年7月、確約手続きを巡る運用を変更。計画に盛り込んだ再発防止策の実施などの履行期間を3年から原則5年以上に延ばし、弁護士ら第三者による監視を義務化した。今回は運用変更後、初の計画認定となった。
 トラック運転手の時間外労働の規制強化に伴う「物流の2024年問題」を踏まえ、公取委は物流業界への監視を強めている。公取委の奥村豪第2審査長は記者会見で、「同様の行為が今後生じないよう、他の荷主も本件を参考として法令順守に努めてほしい」と訴えた。
 橋本総業は自社ホームページで「コンプライアンスの徹底を一層強化し、取引先の期待に応えられるよう事業活動を進めていく」とした。 
〔写真説明〕公正取引委員会=東京都千代田区

(ニュース提供元:時事通信社)