外務省は9日、欧米での年末におけるテロ等に対する注意を呼び掛けた。

【ポイント】
○クリスマスや年末年始といった祝祭日・イベントシーズンは、人の集まりや移動が増えるため、テロが起こる可能性が高まることが懸念されます。
〇欧米では、近年、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発しています。特に、観光施設周辺、イベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。
○常に最新情報の入手に努め、安全確保に十分注意を払ってください。

【本文】
1 クリスマスや年末年始といった祝祭日・イベントシーズンは、人の集まりや移動が増えるため、テロが起こる可能性が高まることが懸念されます。欧米では、近年、警備や監視が手薄で一般市民が多く集まる場所(ソフトターゲット)を標的としたテロが頻発しています。これらは組織性が低い単独犯によるテロが多く、事前の取締りが難しいため、今後も継続することが懸念されます。
 「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)等のイスラム過激派組織は、中東情勢の緊迫化に乗じて、イスラエルや欧米諸国等の関係者や関連施設、宗教施設等を標的にするよう、また、軍事より民間の標的(人・施設)を狙うよう、繰り返し呼びかけており、過激化した個人への影響も懸念されます。また、近年は、極右・極左過激主義思想の影響を受けたテロも発生しています。
 最近のテロ事案等の例は、下記の(参考)を御参照ください。

2 観光施設周辺、レストラン、ホテル、ショッピングモール、公共交通機関、宗教関連施設等は、警備や監視が手薄で不特定多数の人が集まるため、テロの標的となりやすく、常に注意が必要です。特に、クリスマスマーケット等のイベント会場、宗教施設における行事、年末のカウントダウンや祝賀行事、音楽フェスティバルやスポーツ大会等では、テロの可能性を警戒する必要があります。

3 過去のクリスマスや年末年始期間には以下のような事件(未遂含む)が発生しています。
・2016年 ドイツ・ベルリンのクリスマスマーケット車両突入事件
・2017年 英国中部クリスマスイベントテロ未遂事件
・2017年 米国・ニューヨークタイムズスクエア爆破事件
・2018年 フランス・ストラスブールのクリスマスマーケット銃撃事件
・2019年 オーストリア・ウィーンのクリスマスマーケットテロ未遂事案
・2021年 フランス・パリ無差別殺傷テロ計画事件
・2022年 米国・ニューヨークタイムズスクエア付近における警官襲撃事件
・2023年 フランス・パリ(エッフェル塔付近)観光客襲撃事件

4 テロの被害に遭う可能性を減らすため、以下の対策をお願いします。
(1)「たびレジ」を活用し、最新の関連情報の入手に努める。
(2)以下の場所がテロの標的となりやすいことを十分認識する。
観光施設、観光地周辺の道路、記念日・祝祭日等のイベント会場、レストラン、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、ナイトクラブ、映画館、公共交通機関、宗教関連施設等人が多く集まる施設、政府関連施設(特に軍、警察、治安関連施設)等。
(3)上記(2)の場所を訪れる際には、周囲の状況に注意を払い、不審な人物や状況を察知したら速やかにその場を離れる、できるだけ滞在時間を短くする等の注意に加え、その場の状況に応じた安全確保に十分注意を払う。
(4)現地当局の指示があればそれに従う。特にテロに遭遇してしまった場合には、警察官等の指示をよく聞き冷静に行動するように努める。
(5)以下の一般的な留意事項に留意する。
【車両突入の場合】
●ガードレールや街灯などの遮へい物が無い歩道などでは危険が増すことを認識する。
【コンサート会場、競技場、空港等の閉鎖空間】
●会場には時間より早めに入る、終了後はある程度時間を置いてから退出するなど、人混みを避けるよう努める。
●セキュリティの確保されていない会場の外側や出入口付近は危険であり、こうした場所での人だまりや行列は避けるようにする。空港等では、人の立入りが容易な受付カウンター付近に不必要に近寄ったり長居したりせず、セキュリティ・ゲートを速やかに通過する。
●不測の事態の発生を念頭に、出入口や非常口、避難の際の経路等についてあらかじめ入念に確認する。
●パニック状態となった群衆の中で負傷するおそれがあるため、周囲がパニック状態になっても冷静さを保つように努める。
【爆弾、銃器を用いたテロに遭遇した場合】
●直ちにその場に伏せる。
●周囲を確認し、可能であれば、銃撃音等から離れるよう、速やかに、銃弾等を防げる遮蔽物を活用し、低い姿勢を保ちつつ安全なところに退避する。閉鎖空間の場合、出入口に殺到すると雑踏事故などの二次的な被害に遭うこともあり、注意が必要。
●爆発は複数回発生する可能性があるため、爆発後に様子を見に行かない。
【刃物を用いたテロに遭遇した場合】
●犯人との距離を取る。周囲にある物を使って攻撃から身を守る。

5 海外渡航前には万が一に備え、家族や友人、職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。
3か月以上滞在する方は、緊急事態に備え必ず在留届を提出してください。
( http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/zairyu/index.html )
 また、3か月未満の旅行や出張などの際には、海外滞在中も安全に関する情報を随時受けとれるよう、「たびレジ」に登録してください。
( https://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/# )

6 テロ・誘拐対策に関しては、以下も併せて御参照ください。
(1)パンフレット「海外へ進出する日本人・企業のための爆弾テロ対策Q&A」
(パンフレットは、https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_03.html に掲載。)
(2)パンフレット「海外旅行のテロ・誘拐対策」
(パンフレットは、https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pamph_10.html に掲載。)
(3)ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル
(マニュアルは、https://www.anzen.mofa.go.jp/anzen_info/golgo13xgaimusho.html に掲載。)

(参考)近年の欧米での主なテロ事件等(以下、全て現地時間)
【2024年】
○ドイツ:ゾーリンゲンでの刃物による襲撃事件(8月24日)
○セルビア:ベオグラードのイスラエル大使館への襲撃事件(6月29日)
〇ロシア:ダゲスタン共和国の礼拝所や警察施設等への襲撃事件(6月23日)
○ドイツ:マンハイムでの刃物による襲撃事件(5月31日)
○スロバキア:ブラチスラバ郊外での銃撃事件(5月15日)
○ロシア:モスクワ州の商業施設での銃撃事件(3月22日)
○スイス:チューリッヒでの刃物による襲撃事件(3月2日)

【2023年】
○ベルギー:ブリュッセル市内での銃撃事件(10月16日)
○フランス:北部アラスの高校での刃物による教師襲撃事件(10月13日)
○セルビア:ベオグラード近郊での銃撃事件(5月4日)
○ドイツ:デュースブルク市中心部のスポーツジムでの刃物襲撃事件(4月18日)
○モンテネグロ:首都ポドゴリツァの裁判所前での自爆事件(3月3日)
○スペイン:南部の教会での刃物襲撃事件(1月25日)

【2022年】
〇米国:ニューヨークタイムズスクエア付近における警官襲撃事件(12月31日)
〇ドイツ:テロ組織による政府転覆を企図したクーデター未遂事件(12月7日)
〇スペイン:計6か所へ手紙爆弾の郵送(11月下旬~12月上旬)
〇ベルギー:ブリュッセル北駅付近での刃物による警察官襲撃事件(11月10日)
〇スロバキア:白人至上主義・反ユダヤ主義を掲げる人物によるLGBTバー銃撃事件(10月12日)
〇ノルウェー:オスロ市中心部での銃撃事件(6月25日)
〇米国:バッファローのスーパーマーケットでの銃乱射事件(5月14日)
〇米国:ニューヨーク市地下鉄での銃撃事件(4月12日)
〇米国:テキサス州シナゴーグでの立てこもり事件(1月15日)

【2021年】
○英国:リバプールの病院でのタクシー爆発事件(11月14日)
○フランス:カンヌでの刃物による警察官襲撃事件(11月8日)
○英国:リーオンシーでの下院議員刺殺事件(10月15日)
○ノルウェー:コングスベルでの弓矢、刃物による通行人襲撃事件(10月13日)
○ドイツ:ビュルツブルクの商業施設での刃物による襲撃事件(6月25日)
○フランス:ランブイエの警察署での警察官刺殺事件(4月23日)
○スウェーデン:ベートランダでの斧による通行人襲撃事件(3月3日)

(問い合わせ先)
 ○外務省領事サービスセンター
  住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902、2903

(外務省内関係課室連絡先)
 ○領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐関連)(内線)3047
 ○領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐関連を除く)(内線)2851
 ○海外安全ホームページ:
  https://www.anzen.mofa.go.jp/ (PC版・スマートフォン版)