2024/02/19
防災・危機管理ニュース
政府は19日の「日ウクライナ経済復興推進会議」で、長期的に復旧・復興を支援する姿勢を鮮明にした。現地への渡航制限を一部緩和し、民間投資の促進を図る方針。復興ビジネスで海外勢に出遅れることへの危機感からだが、安全上のリスクも抱えることになる。
「経済復興は未来への投資だ。官民一体となって強力に支援する」。岸田文雄首相は基調講演でこう強調。欧米各国の「支援疲れ」が指摘される中、日本独自の取り組みをアピールした。
会議に合わせ、政府はウクライナの復旧・復興に携わる企業・団体関係者を対象に、首都キーウへの渡航制限を緩和。上川陽子外相は「日本企業から『事業開始を決断する上で現地を訪問したい』との声を聞いている」と理由を説明した。
政府はロシアの侵攻以降、繰り返し「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」(首相)と強調。累計で100億ドル(約1兆5000億円)を超える支援を表明してきたが、自民党内からは厳しい財政事情を踏まえ、「ウクライナ支援は増税につながるとの国民の声がある」との指摘も出ていた。
このため、政府が期待するのは民間分野の投資拡大だ。当初は、経団連などが渡航制限の緩和を求めても、外務省を中心に「邦人の安全が第一」(幹部)などと消極的な意見が根強かった。
この間、韓国などは企業関係者のウクライナ入りを認め、現地企業と復興関連ビジネスを推進。首相官邸サイドで、日本企業の参入が遅れることへの懸念が強まった。
もっとも、戦時下のウクライナはキーウですら、ミサイルなどによる攻撃が続いている。今回、外務省は(1)避難用シェルター完備のホテル宿泊(2)移動時の警護要員の同行―などの安全対策を、現地滞在の条件とした。政府関係者からは「もし邦人が被害にあった場合、批判は政権に向けられるだろう」と危惧する声も出ている。
〔写真説明〕日ウクライナ経済復興推進会議であいさつする岸田文雄首相=19日午前、東京都千代田区(代表撮影)
(ニュース提供元:時事通信社)
- keyword
- ウクライナ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
パリ2024のテロ対策期間中の計画を阻止した点では成功
2024年最大のイベントだったパリオリンピック。ロシアのウクライナ侵略や激化する中東情勢など、世界的に不安定な時期での開催だった。パリ大会のテロ対策は成功だったのか、危機管理が専門で日本大学危機管理学部教授である福田充氏とともにパリオリンピックを振り返った。
2024/11/29
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/26
-
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方