政府は19日の「日ウクライナ経済復興推進会議」で、長期的に復旧・復興を支援する姿勢を鮮明にした。現地への渡航制限を一部緩和し、民間投資の促進を図る方針。復興ビジネスで海外勢に出遅れることへの危機感からだが、安全上のリスクも抱えることになる。
 「経済復興は未来への投資だ。官民一体となって強力に支援する」。岸田文雄首相は基調講演でこう強調。欧米各国の「支援疲れ」が指摘される中、日本独自の取り組みをアピールした。
 会議に合わせ、政府はウクライナの復旧・復興に携わる企業・団体関係者を対象に、首都キーウへの渡航制限を緩和。上川陽子外相は「日本企業から『事業開始を決断する上で現地を訪問したい』との声を聞いている」と理由を説明した。
 政府はロシアの侵攻以降、繰り返し「ウクライナはあすの東アジアかもしれない」(首相)と強調。累計で100億ドル(約1兆5000億円)を超える支援を表明してきたが、自民党内からは厳しい財政事情を踏まえ、「ウクライナ支援は増税につながるとの国民の声がある」との指摘も出ていた。
 このため、政府が期待するのは民間分野の投資拡大だ。当初は、経団連などが渡航制限の緩和を求めても、外務省を中心に「邦人の安全が第一」(幹部)などと消極的な意見が根強かった。
 この間、韓国などは企業関係者のウクライナ入りを認め、現地企業と復興関連ビジネスを推進。首相官邸サイドで、日本企業の参入が遅れることへの懸念が強まった。
 もっとも、戦時下のウクライナはキーウですら、ミサイルなどによる攻撃が続いている。今回、外務省は(1)避難用シェルター完備のホテル宿泊(2)移動時の警護要員の同行―などの安全対策を、現地滞在の条件とした。政府関係者からは「もし邦人が被害にあった場合、批判は政権に向けられるだろう」と危惧する声も出ている。 
〔写真説明〕日ウクライナ経済復興推進会議であいさつする岸田文雄首相=19日午前、東京都千代田区(代表撮影)

(ニュース提供元:時事通信社)