ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使は17日までにインタビューに応じ、日本の自動車メーカーの投資誘致に意欲を示した。ウクライナでは電気自動車(EV)用電池に使われるレアメタル(希少金属)が産出され、ロシアから撤退した日本メーカーのEV生産拠点として最適だと説明。経済復興につながる事業を通じ、両国が利益を得られると語った。
 大使は、ウクライナは工業国として「車や航空機、ロケットまであらゆる製品を生産してきた」と実績を紹介。EVに欠かせないリチウムやコバルトなどの重要資源を産出するほか、需要の高い欧州に近い地理的優位性もあると訴えた。ウクライナ侵攻後にロシアから撤退したトヨタ自動車や日産自動車を念頭に「今後各社と誘致の協議を進めたい」と述べた。
 19日には「日ウクライナ経済復興推進会議」が開催され、両国の官民が多くの協力分野で覚書を結ぶ見通しだ。大使は、ロシア侵攻で被害を受けたインフラの修復が経済を再生させる上で急務となる中、地雷やがれきの処理、道路復旧、仮設住宅の整備で日本の災害復興の知見や技術が生かされると指摘した。
 会議では、ウクライナの基幹産業である農業の発展もテーマとなる。大使は、日本の農機具メーカーが生産性向上に貢献し、商社などが投資すれば、「農産物を世界市場に輸出でき、日本でも販売できる」と話した。
 一方、長期化が懸念される戦闘については、ロシアが2014年に一方的に併合を宣言した南部クリミア半島を含め、全ての領土から撤退することが停戦交渉に応じる前提条件だと改めて強調した。
 また、欧州連合(EU)の弾薬供給計画や米国の支援が停滞しているが、「各国は世界大戦に拡大する可能性も認識すべきだ」と警告。支援継続の重要性を重ねて訴えた。
 
 ◇セルギー・コルスンスキー氏略歴
 セルギー・コルスンスキー氏 62年8月、首都キーウ(キエフ)生まれ。84年キーウ国立大卒。ウクライナ外務省経済局長、駐トルコ大使などを経て、20年4月に駐日大使に任命された。61歳。 
〔写真説明〕インタビューに答えるウクライナのコルスンスキー駐日大使=13日、東京都港区
〔写真説明〕インタビューに答えるウクライナのコルスンスキー駐日大使=13日、東京都港区

(ニュース提供元:時事通信社)