取締役の義務・役割・責任【前編】
会社法の主要ポイント(1)

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2023/06/29
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
6月は我が国の多くの株式会社において定時株主総会が開催される季節です。読者の皆様も、会社側として、株主として、株主総会に関与または出席するという方が多いのではないでしょうか。
株主総会における議案として重要なもののひとつに、取締役を含む役員等の選任が挙げられます。株式会社との間において、取締役と使用人(従業員)とはその法的関係が異なりますし、これに起因して、取締役には特有の義務が課せられ、役割が与えられ、責任が生じるものになっています。
そこで今回は【前編】【後編】の2回に分けて、取締役の義務・役割・責任について、ご説明したいと思います。
株式会社は、営利目的(事業によって利益を上げ、当該利益を構成員に分配するという目的)の社団法人(人の集団を基礎としてつくられる法人)で、株主をその構成員とします。株主は、株式を保有することを通じて、会社を実質的に所有しており、株式会社の実質的所有者などといわれます。そして、議決権を有するすべての株主によって構成される株主総会は、株式会社の最高の意思決定機関として位置づけられています。
しかしながら、株式会社において、株主が経営をするものとして制度設計されているわけではなく、経営については、取締役の役割とされています。
これらのことを捉えて、所有と経営の分離がなされていると評され、これが株式会社の特徴のひとつであるなどといわれています。このため、すべての株式会社において、株主総会と取締役とは必須の機関とされています(会社法(以下、法名省略)295条、326条1項参照)。
なお、取締役会を設置するか否かについては、選択することが可能であり、取締役会の設置・非設置によって、株主総会の権限が異なります。取締役会を設置していない株式会社においては、株主総会は「株式会社に関する一切の事項」(295条1項)を決議することができるのに対して、取締役会設置会社においては、「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り」(同2項)決議をすることが認められています。
この点を捉えて、取締役会設置会社は所有と経営の分離がさらに進められたものであるなどと評されたりします。
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