2023/02/10
独自調査
新型コロナウイルスの国内感染者が発生してから3 年が経過した。今年5月には感染症法上の位置付けが現行の「2 類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5 類」へ引き下げられるが、リスク対策.comでは、新型コロナウイルス発生当初の企業の対応をデータで振り返ってみた。
今回は、まだ新型コロナウイルスの全貌が見えない中で企業がどう対応したのか、何に困ったのかを改めて分析。回答者の所属組織の規模は500人以上が約半数を占め、業種別では製造業が最も多かった。
回答組織のBCP の策定状況は「BCP を策定しておらず、策定する予定もない」とした組織が3.9%で、大半がすでにBCP を策定しているとした【グラフ1】。
マスク着用すら徹底できていない
質問項目は、当時まだ新型コロナウイルスが国内流行する前の時点だったこともあり、それまでの感染症対策(新型コロナへの対策も含む)と、新型コロナに特化した対応(特に海外対応)に分けて聞いた。
前者の質問では、インフルエンザや麻疹(はしか)なども含め、感染症への対策全般について4段階の実行レベル(1:特に何も考えていない、2:実施をしようと思っているが現時点では何もやっていない、3:実施しているが徹底できていない、4:徹底して実施している)で評価してもらった。
結果は【グラフ2】 の通り、従業員に対するマスク着用や手洗い、手指消毒など感染予防の呼びかけは、平均点数は高いものの、徹底まではできていない状況。感染拡大時における出勤前の体温測定も、今でこそ当然になっているが、当時はほとんど行われていなかったことがわかる。
BCPの運用によって差が出た項目、出ない項目
今回は改めて、この結果とBCPの運用状況についてクロス分析を試みた。その結果、興味深い傾向が見えてきた。
1点目は、BCPの運用状況によって、BCPを策定していない、あるいは策定しても見直していない組織と、定期的に見直している組織では、各感染対策の徹底度合いに大きな差が生じていたことが分かった【グラフ3】。
リスク対策.com では、新型コロナに関する調査を、その後も継続的に実施しているが、感染拡大が進むにつれ、BCPの運用状況による組織間の差は見られなくなっていった。すなわち、初動においてこそ、BCPの取り組みによる差がつきやすいと考えられる。
2点目は、BCPを定期的に見直しているような組織であっても、ほとんど徹底できていない項目があったということ。具体的には「感染拡大時における従業員の体温測定の徹底」「感染拡大時の来訪者の立ち入り制限基準の取り決め」「クロストレーニング」「感染症を想定した訓練」、そして、驚くことに「感染拡大時のテレビ会議や電話会議への会議の変更」も、当時ではBCPができている企業でさえあまり徹底できていなかった。
新型コロナウイルスの感染拡大に合わせ、テレワークは完全に組織に定着し、感染対策は飛躍的に変化をしたが、一方で、テレワークを除く感染対策がすべて組織に定着したとは言えず、また、時間が経過すれば元の木阿弥になりかねない。
独自調査の他の記事
おすすめ記事
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/17
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方