自分の命と財産は、自分で守る

防災・防犯委員会では、この手引きを作った上で、阪神・淡路大震災で得た「自分(自社)の命と財産は、(自社)自分で守ること」を防災の原則とし、足りない部分を補足するために具体的な防災計画を練っていった。そうして整備されたのが2001年に策定された「神戸旧居留地、地域防災計画」(行政の地域防災計画ではなく独自に定めた計画)だった。この防災計画は、次の3つの基本理念に基づいた整理がされている。

①非常時における旧居留地内企業の相互支援をスムーズにする
②非常時における来訪者を助ける
③日頃から防災意識を育み、訓練を怠らない

防災・防犯委員会の活動で特筆すべきことは、阪神・淡路大震災以降、20年にわたって毎月17日に定例会を開催し、毎年秋ごろには防災訓練を実施、さらに、市民救命士資格の取得講習会と防犯講習会をそれぞれ年に2回ずつ開催、また毎年、防災計画(マニュアル編)の定期的見直しも行うなど、活動を継続させていることだ。2008年には防災活動の土台となる地域防災計画そのものを改定した。

山本氏は、改定理由は大きく2つあるという。

1つは、通信環境が急ピッチで変わってきていること。阪神・淡路大震災の頃には一般的でなかった携帯電話やスマートフォンなどが急激に普及し、社内の連絡網や安否確認方法を臨機応変に対応させなければならなくなってきた。もう1つは、各種の指示系統をガチガチに束縛するのではなく、ファジーな状況で柔軟に対応できるようにしたかったからだという。

「行政とは違い、親睦団体の防災計画なので、トップがいなくても動けるようなシステムにしたかった。理想は、『全員が防災委員長』で、全員がマニュアルがなくても動けるよう、繰り返し打合せや訓練をしているのです」(山本氏)。

2013年には、東日本大震災の教訓から、津波対策を盛り込んで防災マニュアル策定の手引き(後掲)を改訂し、連絡協議会のホームページにも掲載。1~2回の防災訓練は、年避難訓練や共同備蓄品の点検(備蓄倉庫はエリア内に2カ所)、三角巾やロープ結索の方法、AED操作の講習などを行なっている。

旧居留地、連絡協議会としての備蓄倉庫

年2回の市民救命士資格の取得講座では、すでに連絡協議会内で1000人以上が資格を取得している。会員となっている会社の中で参加の呼びかけをするため、多くの受講者がいる。従業員や顧客の安全確保に役立っているほか、事業所などのイメージアップにもつながっているという。防犯講習会も警察と連携して年2回実施。これらの講習会は、会員以外のテナントにも呼びかけ、参加を促している。

防災・防犯委員会の最近の取り組みとしては、火災発生に備え、エリア内の各ビルに事業所内の危険情報や防災・減災情報をまとめた「FDカード(FireDefenceカード)を導入」してもらっている。非常時には消防隊にその情報を提供し、被害を最小限にとどめようというものだ。