2018/06/07
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』
■どの対策が先かは代替の有無と切迫性を勘案して決める
全員で議論を重ね、すべての対策についてスクリーニングを行い、最終候補を優先度順にホワイトボードに書き出したところ、次のようになりました。
2.安否確認システムの導入(代替案により1年後に再度検討)
3.本社ビル旧館の耐震化工事(見合わせ)
優先順位づけの理由は次のようなものでした。まず「電気設備の移設」。この会社のBCPで想定する災害は首都直下地震と近くを流れる江戸川の氾濫です。現在の電気設備は地下駐車場の小部屋にあります。大地震の衝撃による配管の破断や台風水害によって地下室に大量の水が流れ込めば、電気系統が壊滅的な被害を受けかねません。地上の安全な高さに移設することが急務であると判断されました。
次の「安否確認システムの導入」。このシステムは安否報告の要求と集計、確認などをすばやく行うための仕組みですが、これはSNSを通じて従業員が自主的に会社へ報告するよう周知徹底すればよいとの方向で決まりました。そして年内にSNSによる安否確認の検証を行い、期待通りの結果が出なかったら次年度に改めてシステムの導入を検討するという判断です。
最後は「本社ビル旧館の耐震化工事」。現在の旧館はオフィスではなく、主に資材や備品、事務用品の倉庫として使われています。人の出入りも多くはなく、新たに社長案件として旧館の土地建物の売却の話も浮上していることが分かったことから、耐震化工事の意義は薄れてしまいました。
■改善・再検討を見据えた「Check」と「Act」
これら3つの対策のうち、最初の2つが期限付きの実施項目となったことから、さっそく実行に移されました。すなわちPDCAの「Do」のステップです。
さて、この2つを導入した結果をカクオさんたちはどのように評価したのでしょうか。いわゆる「Check」のステップです。一つ目の電気設備は、滞りなく移設工事が進み、水害ハザードマップに照らして余裕のある高さに設置されました。本来なら実際に災害が起こるのを待って、移設した電気設備が無事だったかどうかを判定することが「Check」なのでしょうが、これではいつになったら評価できるかわかりません。よってカクオさんたちは、ひとまず工事の検収が無事に完了した時点を以て目的を達成したとみなすことにしました。
二つ目の安否確認システムに代わるSNSの活用については、インターネットとアプリの設定だけなので導入に時間はかかりませんでした。そしてこの後、一部の従業員に呼びかけてSNSによる安否確認のテストを行い、返信と集計の速さと正確さなどを評価し、「Check」の判定に持ち込みました。
早くも1年が過ぎようとしています。2つの対策が完了し、おおむね満足できる結果であったことに、対策本部メンバー全員がほっと胸をなでおろしました。最後に社長がこう付け加えました。
「どちらのBCP対策も、実際に災害が起こったときが本当の良し悪しが分かる時だ。しかしまあ、それで期待通りの結果が出なかったら、また改めてPDCAに取り込んで回してみればいい」。
「はい!社長」。カクオさんは丸い笑顔で元気よく返答しました。
(了)
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』の他の記事
- 第19回(最終回):経営方針が変わってBCMが消滅寸前!?(適用事例13)
- 第18回:災害協定をリップサービスで終わらせないためには?(適用事例12)
- 第17回:雲をつかむようなBCPの見直しよ、さらば!(適用事例11)
- 第16回:つぶやきは災いのもと!(適用事例10)
- 第15回:その対策、予算の都合で見合わせとします!(適用事例9)
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