健康経営に大きく影響する働き方の変化
第1回:今、なぜ健康経営か

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2021/12/08
ウイズコロナ時代の健康経営
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
本連載でとり上げる健康経営は、1990年代に米国でその考え方が広がったものですが、日本においても2000年代以降、多くの企業が取り組むようになっています。
従業員の健康管理や増進に投資することによって、そのパフォーマンスが向上し、成果が上がる、そして結果として企業の業績やイメージもよくなるという好循環が起きるという考え方ですが、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化したことにより、企業は健康経営に大きな影響を与える変化に直面しました。それは、働き方の変化です。
例えば、感染から従業員を守るために多くの企業が導入した、在宅勤務を中心とするテレワークが、この働き方の変化に該当します。
在宅勤務の導入の主な目的は、接触回避によって感染リスクを低減することですが、それに加えて、通勤や顧客訪問などの移動時間がなくなり労働効率がアップするなどの副次的な効果も見られました。
しかしその一方で、在宅勤務中のコミュニケーション不足によるメンタルヘルスの悪化のように、健康経営の観点からは放置できない課題も見えてきました。
健康経営は「健康経営の推進について」(令和3年10月、経済産業省・ヘルスケア産業課)において、次のとおり定義されています。
企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上につながると期待されています[図1]。
健康経営では、人的資源、つまり従業員への健康投資を行いますが、その具体的メリットは、次のとおりと考えられています。
・従業員の健康増進と活力向上
・経営課題解決に向けた基礎体力の向上
・組織の活性化と生産力の向上
・イノベーションの源泉の獲得・拡大
・業績向上と企業価値向上 など
健康経営が注目され、多くの企業が取り組みを進めてきた背景として、少子高齢化による生産年齢人口の減少があります。
高齢化の推移と今後の予測をみると、生産年齢人口(15~64歳)は1995年の8716万人をピークに減り始め、その傾向は今後も続きます。今から約40年後の生産年齢人口は、約4793万人となり、2020年のおよそ64%まで減少すると予測されています[図2]。
企業活動の観点から考えると、人手不足が深刻化するとともに、従業員が高齢化により病気で働き続けられなくなるリスクも高まります。また、高齢化による医療費の増加で企業の社会保険料負担が増えることも起こり得ます。
このような高齢化の状況を背景に、企業は、確保した人材に長期間、心身ともに健康で働いてもらうことが極めて重要であるとの考えに至り、健康経営に取り組んでいます。
ウイズコロナ時代の健康経営の他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方