第13回:BCM業務の引継ぎはマイナーな問題だけど…(適用事例7)
重要性や切迫性をうまく伝えましょう
BCP策定/気候リスク管理アドバイザー、 文筆家
昆 正和
昆 正和
企業のBCP策定/気候リスク対応と対策に関するアドバイス、講演・執筆活動に従事。日本リスクコミュニケーション協会理事。著書に『今のままでは命と会社を守れない! あなたが作る等身大のBCP 』(日刊工業新聞社)、『リーダーのためのレジリエンス11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『山のリスクセンスを磨く本 遭難の最大の原因はアナタ自身 (ヤマケイ新書)』(山と渓谷社)など全14冊。趣味は登山と読書。・[筆者のnote] https://note.com/b76rmxiicg/・[連絡先] https://ssl.form-mailer.jp/fms/a74afc5f726983 (フォームメーラー)
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■人事異動は想定外!?
人事異動は会社の宿命です。せっかく今の業務に慣れ親しんできたなあと思った矢先、「〇〇さん、あなた△△部門への異動が決まりました。まあがんばってください」と上司に言われる。こんな時、もしあなたがいまの業務や人間関係に満足していないなら新しい希望が見えてきたように思うかもしれませんが、多くの場合、異動を不安材料ととらえるでしょう。身に付けた知識も経験も、仲間も変わってしまうのですから。
ここ数年、総務の仕事を任されてきたK子さんの場合も、これは例外ではありませんでした。彼女が担当していた業務の一つにBCM(事業継続管理)があります。一から勉強を始め、何度かセミナーにも参加するなどして事業継続管理の知識と経験を積み重ねてきました。
ところが先日上司に呼ばれて転勤の話が持ちあがりました。今度の部署は、自宅からこれまでとほぼ同じ時間内で通えるとは言え、方角的には逆方向にある施設です。仕事の中身も自分にとってはまったく新しいもので、期待と不安が入り混じるとはまさにこのことでしょう。
転勤の日取りが決まれば、あとは現行の業務の引継ぎスケジュールを組んで、上司と相談しながら誰に割り振るかを決めるわけですが、彼女としては、自分の新規赴任先に対する不安のみならず、この事業継続管理という、変則的な業務を所定の期間内に引き継がなければならないことを考えると、少し気が重くなってくるのでした。
■まずはBCM業務一覧と用語リストを作ること
どの会社でも見られる一般的な業務なら、話はカンタンです。新しい担当者に対し、前もってネットやノウハウ本で予備知識を蓄え、ある程度のイメージを持って臨むようアドバイスすることもできます。昔から繰り返し引き継がれてきた歴史ある業務ならば、すでに信頼に足る業務マニュアルが社内に完備されているでしょうから、それを元に引継ぎ作業を進めることもできます。
ところが事業継続管理となるとそうはいきません。まずは「BCMとは何か?」から説明を始めなければならない。引継ぎ資料の中身を説明するにしても、いろいろ困難が伴います。例えば財務関係の書類には貸借対照表や損益計算書といった世間一般に通用する名称が与えられています。共通認識ができているわけです。しかしBCMの書類となるとなじみのないものばかりで、後任者はともすれば気おくれしてしまうでしょう。このように、いろいろと難儀なことが予想されるので、几帳面な性格のK子さんとしては、まずこのあたりの問題から取り組まざるを得ません。
まず彼女が手をつけたのは、すべてのBCM関係書類をリストアップしてそれぞれの名称を整理統合し、簡単な用語リストを作ることです。そしてBCM業務の一覧ができたところで、各業務に重要度や優先度を割り振って、どの業務が先でどれが後回しでよいかメリハリがつければ、後任者も楽に取り組めるに違いないと考えました。例えばBCP文書の改訂・更新と訓練はA、定期的な見直しはB…といった具合です。しかしどのような基準で重みづけを行えばよいかが、はっきりしません。どれも同じように重要であると見なせるし、逆に日常業務のプライオリティを考えると、BCM業務全般を後回しにしても問題なさそうに見えます。
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