4.北九州市は進化したか?

(1)体制の制度管理
体制の不都合には「ネットワークが構築されていない」「業務が集中する部署が存在」「対応について考えられていない」という3パターンがあることが分かった。あらためてこの3パターンから全体を俯瞰し、体制の再構築を図っている。

(2)インテリジェンス機能
本当に判断が必要な問題に時間が取れるように、手続き化できるものは可能な限り手続き化することとした。災害時の行政に必要な判断のほとんどは、投入すべき戦力のタイミングと量である。この判断は各現場からの需要だけでなく、現状の全体供給能力によって異なってくる。結果論としての正誤ではなく、進みゆく事態の中で正当な判断性が行えるように、インテリジェンス機能を担う職員に特化した訓練を開始しつつある。

(3)習熟
2007 年以降、災害医療体制が本格的に起動しなければならない事態は幸いにも起きていない。しかしながら、2014 年に市内を走る高速道路で20 数台が絡む多重事故が起きた際には、この体制整備と訓練のおかげで消防と医療機関連携は非常にスムースに行えた。

5.今後の課題

我々は、これまでも地域行政と一体となった災害医療体制整備方法について、日本医師会を通じて全国の地域医師会に資料を提供してきた。

また、北九州市では市立八幡病院移転に伴い、災害医療のインテリジェンスに特化した災害医療・作戦指令センター(DMOC)を立ち上げる予定である。そのセンターでは、日常対応として、これまでの取り組みをさらに精緻化するとともに、災害医療に関わる人材育成を図っていくこととしている。

(了)