第10回:キーマンがいなかったらお手上げです!!(適用事例4)
業務が属人的な組織はもろい
BCP策定/気候リスク管理アドバイザー、 文筆家
昆 正和
昆 正和
企業のBCP策定/気候リスク対応と対策に関するアドバイス、講演・執筆活動に従事。日本リスクコミュニケーション協会理事。著書に『今のままでは命と会社を守れない! あなたが作る等身大のBCP 』(日刊工業新聞社)、『リーダーのためのレジリエンス11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『山のリスクセンスを磨く本 遭難の最大の原因はアナタ自身 (ヤマケイ新書)』(山と渓谷社)など全14冊。趣味は登山と読書。・[筆者のnote] https://note.com/b76rmxiicg/・[連絡先] https://ssl.form-mailer.jp/fms/a74afc5f726983 (フォームメーラー)
昆 正和 の記事をもっとみる >
X閉じる
この機能はリスク対策.PRO限定です。
- クリップ記事やフォロー連載は、マイページでチェック!
- あなただけのマイページが作れます。
■もし「その人」がいなかったら…
総務課長を務めるAさんの会社では先ごろBCP(事業継続計画)を完成させたばかりです。基本的な要件はある程度幅広くカバーしました。緊急対応(初動対応)で最も大切な「避難計画」や「安否確認手順」「備蓄」「帰宅困難者対応」、そして火災対策や地震対策も、社内的には概ね合格点と言えるものでした。
また、大切なデータについてはインターネットを使った仮想の専用線を構築し、遠方のとある場所にバックアップを保存しています。緊急対策本部のメンバーについては担当業務ごとに主担当と副担当(または代替要員)を決めました。
ところが、このBCPには一つだけ気がかりな点があります。「緊急対策本部のメンバーについては担当業務ごとに主担当と副担当を決めた」と書きましたが、一つだけ「副担当」が決まっていない業務が残されています。それが「システム管理」です。
重要データのリモートバックアップの仕組みを構築したのはシステム管理者のMさんです。Mさん以外の社員については、今のところどの程度ITの知識があるのか、Mさんの代わりを務めることができるのか、人事関係の書類を見ただけでははっきりとは分かりません。
万一災害が起こり、会社のサーバーが壊れて使えなくなってしまった場合、遠隔保管場所から重要なデータを回収し、どこからか別のサーバーを持ってきて再導入しなければなりません。しかし現状、システムを復旧できるのはMさんだけなので、もし何らかの事情でMさんが出社できなくなれば完全にお手上げです。
■Plan―目標と評価の指標をどう決めるか?
そこでAさんは、災害時にMさんが出社できずにBCP活動が滞ってしまうリスクを避けるために、少し時間をかけてPDCAのステップを踏みながら解決していこうと思い立ちました。これが今回のテーマです。
まずは「Plan」のステップ。何を目標とし、どのように達成するのか。これをしっかり決める必要があります。このケースで問題となっているのは、「Mさんの不在が業務継続や復旧のボトルネックになってしまう」ことです。これを避けるために、例えば次のような目標を決めるものとしましょう。
【目標】現行のシステム管理者が不在でも重要なデータとシステムを復旧できる体制を整える
次に、この目標を達成するための手段もしくは対策を考えます。システム管理者クラスの資格を有する者をもう1人雇用すれば、この問題は難なく解決するのでしょうが、会社にはそれだけの余裕はありません。したがって、これに代わる次のような案を検討することになるでしょう。
【目標を達成するための方法・対策】
・災害時にどのシステムを生かすのかを決めておく
・データの回収および上記システムの復旧手順を分かりやすくマニュアル化しておく
・社員の中からITに明るい人材を掘り起こし、機会を見つけてクロストレーニングで育成する
以後、これら3案は段階的に実施することになります。それぞれ具体的な作業項目に落とし込めますから、いつまでに何を完成・完了させたかで、達成状況の目安はある程度つかめますが、もう少し客観的な評価・検証方法が必要でしょう。詳しくは後ほど。
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方