2021/05/15
熊本災害~令和2年7月豪雨対応の検証~
2016年の熊本地震に続き、2020年は豪雨災害に見舞われた熊本県。7月3日から7月31日にかけて続いた令和2年7月豪雨は当初「熊本豪雨」とも呼ばれた。
気象庁は4日18時までの24時間雨量を多い所で200ミリと予測していたが、線状降水帯が熊本県付近に形成・停滞したことから、熊本県内では6時間で450~500ミリを超える記録的な大雨となり、死者・行方不明者67人、家屋全壊1489棟、半壊3097棟などの甚大な被害をもたらした。
3日時点で避難準備・高齢者等避難開始を呼び掛けた自治体もあったが、多くは夜中から朝方にかけて避難情報を発令せざるを得ない状況に陥った。過去に例がない記録的な豪雨に見舞われた地域も少なくない。清流として知られる球磨川やその支流は獰猛な姿へと変貌し、周辺の集落を次々に飲み込んでいった。球磨川では10メートル以上水位を増した地点も確認された。さらに、洪水や土砂災害はライフラインや通信インフラを破壊し、多数の集落が孤立し、固定電話や携帯電話、さらにはインターネットすらも接続できない地域も発生した。
予測ができない、前例のない規模の突然の災害。道路の寸断、通信の途絶、さらにはコロナの感染拡大が懸念される中で、自治体はいかにこの災害と闘ったのか。
対応に当たった自治体首長(当時)へのインタビュー内容をシリーズで紹介していく。
一晩で急激に天候が変わった 山江村 |
第1回は山江村。村内の90%は山林で、球磨川の支流である山田川と万江川が流れており、河川の氾濫と土砂災害により、死者こそ出なかったが甚大な被害が発生した。内山慶治村長に聞いた。 |
越水する前提で動いてくれ 人吉市 |
第2回は人吉市。球磨川は左岸、右岸の両側にあふれ20人の犠牲者を出した。市の東側に隣接する錦町で川辺川と合流した球磨川は、人吉市を抜け、東隣の球磨村へと流れ込む。松岡隼人市長に聞いた。 |
前日に出した避難情報、しかし避難につながらず 球磨村 |
第3回は、球磨村。人吉市でいくつかの支流が合流して水位を増した球磨川は、球磨村の山間狭窄(きょうさく)部へと流れ込み、国道や県道、村道、さらには周辺の集落を次々に飲み込んで村全体を孤立させた。14人の犠牲者が出た特別養護老人ホーム「千寿園」は支流・小川と球磨川の合流点にある。松谷浩一村長に聞いた。 |
あらゆる通信が途絶えた 八代市 |
第4回は、八代市。人吉市、球磨村を抜けた球磨川は、山あいの集落である坂本地区を抜けて八代平野、さらには八代海へと続く。この坂本地区で球磨川はかさ上げされた住戸を含む集落全体を飲み込み、4人が犠牲、1人がいまだ行方不明という大きな被害を出した。中村博生市長に聞いた。 |
恵みの川だから怖さも知っている 相良村 |
第5回は、相良村。球磨川水系における最大の支流で「日本最後の清流」とも称される川辺川が村を縦断するように流れる。川辺川は村の最南部で球磨川と合流。7月豪雨では、川辺川の氾濫などで多くの住家が被害を受けたが、犠牲者は出なかった。吉松啓一村長に聞いた。 |
建設課や消防職員だった頃の経験が生きた 津奈木町 |
第6回は、津奈木町。海岸部で熊本県の南部、水俣市の北隣に位置する。海沿いには急峻(きゅうしゅん)な山があり、細い道が集落をつなぐ。7月豪雨では多数の土砂災害が発生した地区である。山田 豊隆町長に聞いた。 |
「できることからやりなさい」 芦北町 |
第7回は、芦北町。町の西部は八代海に面し、町域東部の山間部を球磨川が流れ、中央部には二級水系の佐敷川と湯浦川が流れ、県内で7番目に広い面積を持つ。7月豪雨では、山間地の土砂災害と河川氾濫により広範囲で被災し、11人が犠牲になった。竹﨑一成町長に聞いた。 |
熊本災害~令和2年7月豪雨対応の検証~の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方