東京都中小企業振興公社は1月28日、「コロナ危機を生き抜くBCPの運用方法」をテーマとするBCP策定推進フォーラムを都内で開催した。

第1部では、株式会社東京商工リサーチ情報本部情報部部長の松永伸也氏が基調講演を行ったほか、新建新聞社リスク対策.com編集長の中澤幸介氏が感染症を考慮したBCPについて解説した。第2部では、大成化工株式会社代表取締役社長の稲生豊人氏、株式会社マルワ代表取締役社長の鳥原久資氏、株式会社生出代表取締役社長の生出治氏の3者が事例発表を行なった。シリーズで、講演内容を紹介していく。第2回は、リスク対策.com編集長の中澤幸介氏の講演概要を紹介する。

 

 

BCPは、会社の普段の経営において、主要な経営資源が、災害などにより使えなくなるような影響をなるべく受けないようにするとともに、仮に受けたとしても代替の手段で事業を続けたり、あるいは早期復旧できるようにする。万が一、事業が止まってしまっても在庫や資金調達などでやり繰りできるようにするための計画です。ただし、あらゆる事業に対してではなく、あらかじめ会社の中で優先的に守る事業を決め、その事業の操業度も最低限どのくらいのレベルが必要なのか目標を明確にしておくことがBCPの醍醐味と言われるところです。

感染症BCPの場合、スタッフや、取引先のスタッフの方が感染し、業務が1つ、2つと止まり、事業が止まり、本当に長期化すると会社そのものが成り行かなくなる懸念があります。それに対して、これ以上落としてはいけないという操業度レベルをしっかり決め、場合によっては戦略的に在宅勤務にして出社率を下げながら、何とか乗り切って通常業務に戻していく。これがパンデミックなどの段階的拡大事象に対するBCPのイメージだと思います。

優先的に守る事業とは、社会・市場への影響がある事業や、法規制によって止めることが許されない業務です。実際には、災害の状況はどんどん変わっていきますし、需要の変動もありますので、事業を特定することは言うほど簡単ではないのですが、その事業が止まらないように、最適な事業継続戦略を立てる必要があります。

 

事業継続の手段は、感染症想定と地震想定の双方に役立つものもありますが、必ずしも一致しない対策もあるため整理しておくことが必要です。例えば、事前対策としての消毒液・マスクの備蓄や感染症予防教育はどちらにも有効ですが、耐震補強や転倒防止などは感染症想定に役立ちません。一方、こうした原因を特定して対策を行うと、どうしても見落としが出てきますので、地震や感染症を想定して計画を作るのではなく、経営資源ごとに「社員が出社できない状況になったら」「会社が使えない状況になったら」など「リソースベース」で対策を考えて作っておく方法もあります。ただし、その場合にも、想定する事象を洗い出し、どのような事象が自社にどのような影響を及ぼすのかはBCP文書に記載した方がいいでしょう。