チャイナリスクにも対応 
「あと施工アンカー」と呼ばれる建築構造物の取り付け部品や、パチンコ玉など鋼球の製造販売を手掛けるサンライズ工業は、東日本大震災を機にBCPへの取り組みを始めた。 

主力製品の「あと施工アンカーCタイプ」は、全国の2割ほどのシェアを誇る。手すりや建築金物の取り付け、機械設備の取り付けに使われている製品だ。 

同社は鳥取県の工場に加え中国の唐山市に関連会社を持つ。BCP策定のきっかけは東日本大震災。仙台市のパチンコ玉素材メーカーから納入が途絶え、顧客への商品供給が遅れた。その後は国内の取引先を中心に、BCPの策定に関する問い合わせや、非常時の対応に関する問い合わせが増え、BCPに取り組むことを決めた。 

一方、会社を取り巻くリスクは震災以外にも顕在化している。例えば中国における政情不安や、従業員のストライキ問題、為替リスクなど。 

中国に進出したのは1999年。安い人件費を求めて進出したが、この10数年で人件費は3倍に高騰した。為替リスクも悩みの種だ。「もともと1ドル80円ぐらいでアンカー1本を買えていたのが今は102円、103円ぐらい」。さらに、2012年12月に起きた笹子のトンネル事故をきっかけに、建築用の材料については、国内製品が求められる傾向が高まっているという。 

パチンコ玉の生産については、業界全体が右肩下がりにあるため投資が難しい。数年前までパチンコ玉のメーカーは国内で5~6社あったが今は同社を含め2社だけ。倒産した他社の生産まですべてカバーできれば受注を大幅に増やせたが、国内で一貫生産を行っているため手が回せなかったと代表取締役常務の仁保晶議氏は悔やむ。 

同社では、BCPの構築とともに、こうした様々なリスクについても併せて対策をしていくことを目指している。 

具体的には、仕入先の分散や、現有設備の再配置。「BCPを策定する中で、1社からの仕入れに依存している製品が多いことが判明した」と仁保氏は振り返る。 

中小企業は仕入れ量が少ないので複数購買体制を展開することは現実的に難しい。しかし、既存の取引先に相談しながら探してみると、他県などにも様々な企業があることが分かったという。「技術力を高めながらよりよい製品を作っていくことが、結果的にBCPの実効性の向上にもつながる」(同)。 

中国での生産体制については、国内需要の今後の見通し、コスト、顧客からの信用などを総合的に考慮して、設備の再配備を考えるとする。「市場の構造変化を見ながら、BCPを構築していくことが必要」と仁保氏は語る。

BCPは平時の経営に役立つ 
コンサルティングとして、鳥取県内のBCP策定を支援しているセコム山陰プロジェクト推進室長の中谷典正氏は、「災害時のためだけにBCPをつくるのではなく、日常的な経営に役立てる視点が大切」と話す。「BCPは作るのもマンパワーが必要だし、維持するのも大変。それが緊急事態のためだけと考えれば、なかなか取り組むことができないし、実際に災害に対して本当に強くなったのか検証も難しい。それならば平常時から、ブランド力を高める、重要な資源を明確にして経営のスリム化を図る、仕入先を多くして技術力を高めるなど、平時の経営にBCPを役立てることを考え、確実に組織の文化に定着させるべきでは」と提案する。