2016/05/06
誌面情報 vol39
Q.情報が無い中で被災状況をイメージするということは極めて難しいことのように思いますが?
越野 情報が入ってこない中でどこまでイメージできるかは、実際に災害を経験していないとなかなかできないことです。僕は阪神・淡路大震災の時、陸上自衛隊第13師団の作戦部長として神戸市で救援活動にあたった経験があるので、市町村がどうなっているのか、情報が入ってこないということは何も報告できないくらいひどい被害だということが想像できました。こうしたイメージ力を高めていくには、実際に災害を経験するか、訓練を数多くこなすしかないわけです。首都直下や南海トラフで出されている被災想定をもとに、訓練をして、最悪の事態をイメージするトレーニングを積んでいくことが大切です。
平時と危機対応時の組織体制は違う
Q.3.11を乗り越え、改めて浮き彫りになった課題もあったかと思いますが、どのような点でしょう。
越野 一つは、意思決定です。危機対応時には災害対策本部のトップだけでなく、いろいろな立場の人が、それぞれの現場で意思決定をしていかなくてはなりません。各市町村の防災担当課長や消防署長、消防団長、民生委員長など、それぞれの立場の人が何を目的・目標に、どう意思決定したのかが問われます。それが適切にできたのかどうか。
個人的には、で彼らがどういう3.11ことを悩み、どのような意思決定をしたのか、その判断が適切だったのか、もし適切でなかったらなぜ適切でなかったのか、どうすればよかったのかを、改めて見直す必要があると考えています。その上で、未曽有の災害時において適切な意思決定を行うための訓練がどうあるべきかを今まさに研究している最中です。
もう一つは組織の体制です。行政は、危機対応のために作られた組織ではなく、平常の業務を効率的にやろうという組織ですから、知事の指示がなくても、平時は法令や制度に従って業務を行っています。しかし、有事の際は法令とか条例に従ってやれる状態ではなく、トップの意思決定に基づいてやらなくてはいけない。つまり、業務構造がガラッと変わっているのです。そのことを分からず、普段通りのルーチンの仕事のようにやっていると、縦割りの弊害が出てきます。例えば「それは市町村の仕事ですから、私はやりません」とか。冷静に考えれば、市町村が機能していないのですから、県が市町村に代わって業務をしなくてはいけないはずなのに、自分が本当に何をやらなくてはいけないかが判断できない。
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