(出典:BCI / Coronavirus Organizational Preparedness表紙)

BCMの専門家や実務者による非営利団体BCI(注1)は、新型コロナウイルスへの対応に関するアンケート調査を、2020年3月にBCI会員を主な対象として実施し、その結果を「Coronavirus Organizational Preparedness」として公開した。アンケートの実施が3月16〜18日と短期間であるにもかかわらず、73カ国の638人から回答が寄せられ、報告書は20日に公開されている。

なお今回は特に短期間で行われたためか、回答が従来のBCIによる調査よりもさらに欧米に偏っている。回答の52.9%が欧州、16.2%が北米、9.2%がオーストラリアからであり、アジアからの回答はないようである。従って本稿で紹介する調査結果については、特に(従来にも増して)欧米での状況が色濃く反映されているとお考えいただきたい。また、これは BCIによる調査全般に言えることであるが、主な回答者がBCI会員であるため、回答者の多くは一般の方々に比べて事業継続や緊急事態対応などに対する関心や意識が高く、有する知識や情報も多いと考えられるので、このような回答者層によるバイアスが調査結果に含まれている可能性があるということも考慮する必要がある。

衛生施策の実施やサプライヤーの見直し

まず図1は、保健衛生施策(health and hygiene measures)の実施状況である。握手しない方針(non-handshake policy)というのは日常的に握手をする欧米ならではだが、感染者が発生した場合の清掃を行う会社と契約したという回答が約4割、隔離のための部屋を用意したという回答が約3割というように、有事を想定した準備をしている組織が一定数あることは注目に値する。

写真を拡大 図1. 保健衛生施策(health and hygiene measures)の実施状況(出典:BCI / Coronavirus Organizational Preparedness)(和訳部分は筆者)

また図2はサプライチェーンの途絶に関連する施策の実施状況である。「主要なサプライヤーのBCPの見直しを行った」という設問については、原文では「review」と書かれているのを「見直し」と訳させていただいた。従って単に内容を再確認したもの(必ずしも内容の更新などを伴わない)が含まれている可能性がある。しかしながら、いずれにしてもサプライヤーの事業継続性に対する関心が高く、その関心が行動につながっていることが分かる。また4割程度の組織が実際にサプライヤーを変更したか、変更を検討していると回答している。

写真を拡大 図2. サプライチェーンの途絶に関連する施策の実施状況(出典:BCI / Coronavirus Organizational Preparedness)(和訳部分は筆者)

本報告書では、調達先を地元のサプライヤー(注2)に切り替えた(もしくは切り替えを検討している)組織が4割近くあることにも特に注目されている。この傾向は感染症が収束した後も残る可能性があり、温室効果ガスの排出目標をクリアすることにも役立つと指摘されている(注3)。