ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
流砂からの脱出術
まず落ち着く。砂の流れに反してもがくとどんどん沈んでしまう
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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近年、世界中で大水害が増え続けているが、日本でも河川の氾濫や地震による液状化などで地盤が水で緩み、場所によっては流砂状になる可能性が高い。
もし、流砂状の地面に落ちた人がいたら。もしくは自分が落ちたらどのようにして助けるだろうか?流砂に体が取られてしまい、抜け出せなくなっている間に津波や河川等の溢水で水かさが増した場合に、どうやって脱出したら良いのだろうか?
潮干狩りで膝くらいまで土泥状の中に足を取られたことがある人はいるかもしれないが、ウエストまで入ってしまったら、どうやって脱出するのか?
下記のビデオは「流砂からの脱出術」をとてもわかりやすく説明している。
How to escape quicksand(出典:YouTube)
流砂から脱出する方法
まず、流砂や液状化の地盤が有るかもしれない地帯を歩く時は、棒きれやウォーキングストックなどで、足下を確認しながら進む。
以下、ビデオの説明に日本の事情を追加した。流砂から脱出する際に必要となり、大いに役立つと思う。
■流砂から脱出する方法
1、まず、落ち着く。砂の流れに反してもがくとどんどん沈んでしまう。
2、流砂に浮くためにゆっくりと動いて脱出する体制を整える。
3、どんなに深くても体が浮くため頭の先まで沈むことはない。
4、流砂の構成は、水、泥、砂。しばらくするとそれ以上沈まなくなる。
5、誰かに引っ張らせない。引いても抜けない。
6、救助者は長靴を履かない。ドライスーツが理想。
7、もし、落ちた人が靴を履いていれば脱いだ方が脱出するときの抵抗が減る。
8、両足をゆっくりと大きく動かして圧力を緩める。
9、仰向けになり、両手両脚を大きく広げて、背中で浮くようにする。
10、足が抜けたらコンパスのように大きく広げて浮力を保つ。
11、背泳ぎのような要領で直近の固い地面へと移動する。
12、脱出後は、次に誰かが落ちないように目印や立ち入り禁止のサインなどを置く。同行のグループや仲間にそのエリアに流砂地帯があることを伝える。
13、災害地域で活動する人は、流砂からの脱出法を知っておくか、できれば、身につけておく。特に消防、自衛隊、警察、消防団、災害ボランティアなど災害地で救助活動を行う人は知っておいた方がいいと思う。
■流砂の特性
・流砂(りゅうさ、クイックサンド)は、地盤を構成する土、泥、砂などが、海や川、池や沼、マンホールからの溢水、地下の湧水などによって水分が飽和状態になってできる。
・大地震の際、埋め立て地などの地下水に圧力が加わって起こる液状化現象が発生しやすいエリアでも流砂と同じような現象になるため注意が必要。
・流砂の比重はかなり高く人間が浮くことができるため、流砂に呑み込まれて頭まで沈み、溺れてしまうことはない。
・多くの流砂が深さ1m程度なので、立っている限りは、完全に地面下に沈んでしまうことも少ない。さらに深い場合でも、浮力により上に押し上げる力があるため慎重に動けば脱出することが可能である。
・パニックになり、もがき苦しんで力尽きると流砂の中から抜け出せなくなり、立ち往生する危険性のほうが高い。土砂に埋められている場合と同様な状況になる。
・大災害時、誰もいないエリアで流砂に立ち往生すると飢餓や洪水、津波などで溺れたり、二次的災害に巻き込まれる危険がある。
・もがけばもがく程沈み込んで行くが、浮力により一定以上は沈まないので、立っている限りは沈没する危険性は低い。
・静止状態では土砂のように圧力による抵抗があるため、流砂から物体を引き出すには非常に大きな力が必要となる。
・何らかの原因で流動している流砂については、水、洪水と同程度以上に危険であり、土泥のため液体よりも破壊力がある。
・流砂は川岸や沼地、又は海岸の近くで見ることができる。流砂を引き起こす沼を俗に底なし沼(そこなしぬま)と呼ぶ。湿原にも「やちぼうず」など古くからの呼称で多数存在している。
・広範囲の流砂は車や建物自体を呑み込んでしまうこともある。
(一部、Wikipediaから引用)
下記のビデオでは、流砂の沈み止め板と注水することにより流砂の圧力をゆるめながら落ちた人を引き上げる救助法を紹介している。日本の場合、消防ホースを使っての応用救助法に活用できると思う。
Can You Survive Quicksand? | I Didn't Know That/National Geographic (出典:Youtube)
いかがでしたでしょうか?
この救助法は土砂災害や津波後の流砂状地盤からの救助に役立つと思います。他にも様々な方法が有り、たとえば、消防ホースに3kgほどの圧力を掛けた状態の筒先を落ちている人の足下に注水しながら、同時にそのホースに掴まってもらいながら引き出すこともできると思います。
今年も大きな水害や土砂災害が発生する恐れがあります。どうぞ、各地域で工夫して、まずは、自分の身を守り、助ける&助かる方法を知り、できれば、身につけておきたいですね。
それでは、また。
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
代表理事 サニー カミヤ
http://irescue.jp
(了)
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