日本人同士でも東シナ海を挟んで認識の差が大きいようです

既にご存じの方も多いと思いますが、日系企業の駐在員たちの任期は一般的には3年程度をめどとしている企業が多い様です。仕事上いろんな日本人駐在員に会いますが、たまに中国在住が5年を超えるような方に出会うことがあります。何らかの特殊使命を帯びておられるのか、そういう方の大部分が2度目の駐在とか、香港や台湾、または東南アジアの都市を経由して海外勤務通算10年以上という方も多いなという印象です。

しかし、さすがに中国現地連続勤務10年という方は相当な希少人種といえ、そんな方と出会うと自ずと親近感があふれてきてしまい、「酸いも甘いも経験した同志」といった感覚になってしまうのは不思議な感覚です。

そんな中国経験豊富な方とはいくつかの中国や現地でのビジネスに対する共通認識が存在し、交流をする中で改めて自分の感覚が日本人として一般的な感覚なのだなと再認識することが多くなります。

いくつか例を挙げると、「中国駐在は3年でやっとスタートライン」「中国生活に慣れたと思ったら帰任」「中国や中国人を理解できないままに日本に帰国する」など、短期間(3年でも短いという感覚)での中国駐在は「百害あって一利なし」と言い放つ人もいるくらい、日本生まれの日本人にとっては難攻不落、決して楽な仕事ではないのです。

■ いつまでも理解できない中国と中国人

西欧で10年ほどの海外勤務を経験したことのある駐在員が、意気揚々と中国駐在員として江蘇省の蘇州市の工場へやってきました。年の頃も50代前半、企業としては彼の海外経歴を生かし、中国での事業をさらに推進してほしいという希望もあったのでしょう。しかし、半年もしないうちに彼は大きな壁にぶち当たってしまいました。彼は英語も達者で、生産から物流に至るまで多くの経験を持ち、工場の管理については何不自由ない実力を持っていましたが、中国駐在以降、思ったように仕事がはかどらないのです。彼の感覚からすると余りにもこれまでの国々と中国の事情が大きく異なり、かつ現地スタッフとのコミュニケーションも上手に取れないばかりか、「異常事態」とも思えることが日々繰り返されてしまうのです。

日本であれば適切に指示さえしておけば後はベテラン社員が解決してくれることでも、ここでは自分が細かいことまで見なくてはならない。おまけには、予想もしないことが日常茶飯事で起きてしまいその対応に追われる日々。プレッシャーと激務で心身ともに消耗しきってしまうのも無理ないことでしょう。
もう、これは「中国勤務が彼の肌が合わない」としか考えられません。

実はこれ、彼も現地スタッフもどちらも悪いわけではないのです。これが中国であり中国事業なのです。もし誰かが、中国事業がいかなるものかを知らぬままに準備もなく現地に赴任させられた場合、このようなことになる可能性は非常に大きいと言っていいでしょう。残念ながら、うつ病を発症し、円形脱毛症になり帰国せざるを得なくなった日本人もいるのです。

赴任3カ月で現地での大きな新規プロジェクト推進を任されてしまい、途方に暮れた結果、にっちもさっちもいかず弊社に相談にいらっしゃる方が多いのですが、ご事情を聞く時は本当にかわいそうな境遇にこちらの気持ちがふさいでしまうことも多くあります。