われわれの秩序あるときに合理的でもある世界と異なり、パラレルな世界では混沌と混乱が支配している。原因と結果といった基本的なものでさえ、適用されない。あまりにも奇妙な場所なので描写することもできない。行って自分で見るほうが良い。

現実の災害は乱雑なので、われわれはこれをシミュレーションによって行うのが一般的である。可能な限り精細なカラフルな災害現場あるいはシナリオを想像してみる。今それをしてみよう。まずは思考の実験である。一瞬自分のことを考えてみる。来月、今日から4週間のカレンダーはどうなっているだろうか?

仕事のことは忘れる。自由な時間にいつもする仕事以外のことを考えてみよう。スマホの画面を見つめるのはともかく、バースデイパーティー、ビーチへの旅行、デイビッド・バルダッチのスリラーを読むこと、ゲーム・オブ・スローンの視聴、側道に露店のテーブルを出したレストランへパートナーと行くことなどがあるだろう。

それらを全て書き出してみる。

美しい秋の一日、仕事帰りに友人と一杯やることを想像する。出かけようとして車に足を入れた瞬間、携帯電話が鳴る。そしてもちろんそれは仕事の電話である。結構だ、遊びの全て、つまり翌月に予定した仕事以外のことを書き連ねたリストを取り出す。それを粉々に破いて、くしゃくしゃにして、何であろうと、くずかごへ投げ入れる。

もうそれは必要ではない。

旅に出るからだ。旅立ちのときは今である。秩序のある合理的な世界を後にして、ワームホール(異なる時空間の連絡路)を通って災害というパラレルな世界へ入って行く、その先にあるのはクライシスだ……