写真を拡大 「防災教育の日」の流れ(出典:調布市教育委員会資料)

共助考えるきっかけに

「防災教育の日」は単なる学校での防災訓練を行うだけではない。1校時(時間目)に「『命』の授業」と題した、防災に関する授業を実施。災害時にとるべき行動などを学ぶ。2校時は「保護者・地域への啓発講話」として、有識者や専門家を招いて保護者向けの講話を行う。招くのは防災の専門家や大災害の被災者やNPOの関係者のほか、東京消防庁の消防署員の場合もあり、地域の防災力向上に資する話を行うという。3校時は通常授業だが、この間に授業のない教職員や市から派遣された職員が、保護者や地域住民と連携して避難所開設や運営訓練を行う。

2018年度に第七中学校で行われた防災講話(提供:調布市教育委員会)

そして学校によって一部開始時間は異なるものの、シミュレーションの発災予想時刻である午前11時24分に防災無線が一斉に流れ、避難や避難所開設、保護者への児童・生徒引き渡しといったシミュレーションに基づいた訓練を行い、検証を行う。これまでは各校により内容は異なっていたが、2018年度から統一メニューとしてすべきことを一つ設定。2018年度はマンホールトイレ組み立て訓練を行った。市職員が主導し、児童・生徒や保護者、地域住民に説明を行いながら組み立てていったという。そのほか、炊き出しなど各行独自の取組が行われた。

2018年度は統一メニューとしてトイレの組み立てが行われた(写真は第三中学校、提供:調布市教育委員会)

この訓練には自治会のほか、「地区協議会」と呼ばれる、地域防災の充実をはじめ、様々な課題解決に取り組む地域のネットワーク組織なども参加する。避難所の開設・運営訓練や午後の各校独自メニューの実施に大きく貢献する。「地区協議会」は、概ね小学校の校区を単位に、自治会や消防団、PTA等をはじめ、学校長もメンバーとなり活動する。「調布市防災教育の日」への参加以外にも定期的な会合のほか、秋などに防災に関するイベントも行っている。発災時には日頃の訓練やつながりを生かして「自助・共助」の役割が期待される。1999年から組織化し、現在は全20小学校区中16の地区に設置されている。

学校は子どもを預かる場であるだけでなく、避難所として地域住民の安全の砦(とりで)としての役割も担う。そこにフォーカスし、マニュアルを作るのみでなく、実際そこにいる児童・生徒と教職員に加え保護者や地域住民も巻き込んだ仕組み作りや訓練を行う調布市の取り組みは、基礎自治体における共助を考えるきっかけを作り、盛り上げるものとしてとして注目される。

(了)