2018/09/27
防災・危機管理ニュース
防災科学技術研究所とLINEは26日、インターネットやAI(人工知能)技術を活用した防災・減災に関する連携協力で協定を締結した。防災科研が中心になって整備する「府省庁連携防災情報共有システム(SIP4D)」と通信アプリの「LINE」を連携。設置される防災アカウントを通じた災害情報の配信のほか、被災者から情報収集やAIを用いた質問への応答などを行う。
LINEアプリは2011年の東日本大震災を契機に、災害時にも通じやすいネットを利用したコミュニケーションツールとして開発。2016年の熊本地震では熊本市など地方自治体でも活用された。LINEは熊本市と協定を2017年に締結したほか、熊本地震で起こったことを検証し、その後の災害対応への改善を進めてきた経緯がある。
関係する府省庁など機関が持つ災害情報を集約し、地図に表示するなど使いやすくまとめるSIP4DをLINE、さらには情報通信研究機構のツイッターからの災害情報抽出システムと連携させる。LINEに防災アカウントを設置。被災者から通じ画像や動画、位置情報などを収集する。それらをSIP4Dに反映。被災者には必要な情報をアカウントから配信していく。AIチャットボットにより、アカウントでは被災者からの質問にも回答を行う。AIはデマ対策のため情報の真偽の判断にも用いられるという。
26日に東京都新宿区のコンフォート新宿で協定の締結式が行われた。防災科研の林春男理事長は「防災科研ではネットでの情報発信を掲げた(2022年度までの)7年間の第4期中長期計画の3年目を迎えている。現在は1人1人にうまく情報を届けられてはおらず、これができないと防災・減災は立ち行かないと思う。LINEとのパートナーシップは新たな価値を生み出せる」と協定の意義を説明。LINEの出澤剛社長は「LINEは震災をきっかけにできたもの。CSRとして社会的課題の解決を図っており、その中でも防災・減災には強い思いがある」と述べた。
またパネルディスカッションに出席した防災科研・総合防災情報センター長の臼田裕一郎氏はSIP4D の概要を説明したうえで「防災科研では災害における社会動態の研究を進めており、LINEと組んでこの分野に注力する」と語った。LINE執行役員・公共政策室長の江口清貴氏は「防災科研とは夢のコラボレーション」と評価したうえで、「発災後30分でいかに情報を集めるかが、本当に重要となる」と述べ、初動でできる限りの減災を行い、今回の取り組みを救助や復興の強化推進につなげることに意欲をみせた。
LINEではすでに兵庫県尼崎市などでAIチャットボットを用いたLINEでの問い合わせ対応の取り組みを行っている。今回の協定に基づいた訓練を自治体も参加し年内にも実施予定。江口氏は取材に対し、「これまであまりLINEを活用していない自治体の方がいい」と語り、3回程度行われる見込みの訓練で課題を発見し改善を図る方針を語った。
■ニュースリリースはこちら
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2018/2394
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方