事業者などに障害者への「合理的配慮の提供」を義務付けた改正障害者差別解消法の施行から4月で1年が経過した。ただ、民間会社の調査で義務化を「知らない」と答えた障害者が6割に上るなど、認知度の向上が課題となっている。専門家は「国や自治体の支援体制が重要だ」と訴える。
 合理的配慮は、障害者が設備やサービスを利用する際、申し出を受けた事業者などが過重な負担にならない範囲で対応することだ。スーパーの店員が視覚障害者を商品売り場まで案内するケースなどが想定され、双方の「建設的対話」が重要となる。合理的配慮の前段階として、施設のバリアフリー化といった事前の「環境整備」も欠かせない。
 障害者向けのアプリを提供するコンサルティング会社「ミライロ」などは昨年7月、アプリを利用する障害者らを対象にオンラインでアンケート調査を実施。回答した1007人のうち、改正法施行による合理的配慮の義務化について知っていたのは36.4%で、残りは「知らない」と答えた。
 同社経営企画部の梶尾武志部長は「障害者が知らない以上、『建設的対話』は生まれにくい。国はもっと周知するべきだ」と語る。国は改正法成立以降、事業者向けのオンライン説明会や障害者団体への呼び掛けを行ってきたが、内閣府の担当者は「まだ理解が深まっていないこともあり、継続して周知したい」と話す。
 静岡県立大の石川准名誉教授(社会学・障害学)は「障害者団体を通じて理解は一定程度広がっているが、団体に所属しない人もいる。行政から情報提供しなければ理解が進まない」と指摘。一方、「個別のケースに対応する合理的配慮は万能ではない。『環境整備』と両輪で進めるのが重要だ」と話している。 

(ニュース提供元:時事通信社)