能登半島地震では広い範囲で携帯電話の通信が途絶え、多くの被災者が情報を得られない不安にさらされた。携帯各社はこれを教訓に、通信網の強靱(きょうじん)化や新技術を使った早期復旧手段の導入を加速。災害時も「途切れぬ携帯」の実現に全力を挙げる。
 能登地震では停電や通信ケーブルの切断で、最大約840カ所の基地局が停止。NTTドコモの担当者は「一時は平時の3割程度の地域しかサービスを提供できなかった」と振り返る。各社は復旧を急いだが、道路損壊や渋滞で現場に向かえず、一部地域で障害が長引いた。
 大規模災害の再来を見据え、ドコモは半島地域の通信網を強化。能登(石川県)や津軽(青森県)、知多(愛知県)の各半島など計6地域で、現在2ルートの基幹光ファイバー回線を2025年度末をめどに3ルートに増やす。
 各社は復旧機材も増強する。KDDIは米社の衛星通信網「スターリンク」を活用する車載基地局などを今年度中に約200台から約250台に増やす。スマートフォンのみで直接接続できる新サービスも来年春ごろに開始する。ドコモやソフトバンクは成層圏を飛ぶ無人航空機から電波を届ける「HAPS(ハップス)」を開発中だ。
 災害対策では企業間の協力も欠かせない。NTTなど通信大手4社はこのほど、早期復旧に向けた連携強化で合意した。記者会見したNTTの森田公剛災害対策室長は「通信が使えないことによる被災者の不安を早く取り除き、日常の生活に戻してあげたい。その思いは各社とも同じだ」と語った。 

(ニュース提供元:時事通信社)