生成AI活用で出現した新たなリスク
第4回:コンプライアンス違反の落とし穴

本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
2024/12/12
これだけは社員に伝えておきたいリスク対策
本田 茂樹
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社、その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。企業や組織を対象として、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。
前回、企業活動におけるコンプライアンスの重要性について解説しましたが、その際、コンプライアンスは法令遵守だけでなく、企業のルールや社会規範も重要であること、そして、守るべきルールや規範そのものが変わり得るということもお伝えしました。今回は、企業のコンプライアンス違反の落とし穴について、事例をあげて説明したいと思います。
職場で行われるパワーハラスメントでは、その防止措置が事業主に義務付けられましたが、パワーハラスメントは以下の三つの要素すべてを満たす行為(※注1)と定義されています。
①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによって
③労働者の就業環境が害されること
(※注1)客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しない。
この定義で注意するべき点は、パワーハラスメントをする側の気持ちは関係ないことです。例えば上司が部下を指導する場合に、上司にパワーハラスメントをするつもりがあったかどうかは問題にならないということです。つまり、上司がどのような指導をするかがポイントではなく、部下がどのように思うか、また感じているかが問題となります。
自分が受けてきた指導や教育方法をそのまま続けるのではなく、部下である相手がどのように感じているかを常に見極めることが大切です。
ChatGPTに代表される生成AIを業務利用することもコンプライアンスに大いに関係しています。
GPTは「Generative Pre-trained Transformer」の略称ですが、人工知能を対話形式で運用することによって、文章作成や翻訳などさまざまな場面で使える言語モデルです。ChatGPTがリリースされた2022年当時は、使うのか、使わないのかという議論が盛んに行われていましたが、今はどのように活用するべきかという段階になっているようです。
生成AIは対話形式で違和感なく使えることもあり、また最新の技術革新を活用して効率的な業務ができるということで活用している企業が増えています。
実際、帝国データバンクによって実施されたアンケート調査(※注2)によれば、生成AIを活用する企業は全体の17.3パーセントで、うち9割近くの企業が一定の効果を実感しており、活用の目的は「情報収集」が59.9パーセントでトップとなっています。
(※注2)調査期間は2024年6月14日~7月5日
これだけは社員に伝えておきたいリスク対策の他の記事
おすすめ記事
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方