人員削減のために希望退職を募集する動きが広がっている。東京商工リサーチは19日、上場企業が今年に入って募集した早期・希望退職者数が今月15日時点で9219人に上ったと発表。年間で3161人だった前年の3倍近くに達し、1万人の大台に迫った。希望退職の募集は年末に増える傾向があり、今後さらに拡大する可能性もある。
 リーマン・ショック翌年の2009年(2万2950人)や東日本大震災後の12年(1万7705人)には及ばないものの、コロナ禍で旅行や小売りなどサービス業の人員削減が相次いだ21年(1万5892人)以来の規模。世界全体で9000人の削減を決めた日産自動車など、国内の募集人数を公表していない場合や、人数に上限を設けないケースはカウントしていない。
 昨年までは人手不足で退職募集は減っていたが、「コロナの影響が一巡し、グローバル展開する製造業で大規模な募集が増えている」(商工リサーチ担当者)という。
 募集した企業数は53社に上る。業種別には、電気機器が13社(前年同期5社)で最も多い。シャープが大型液晶パネルの生産停止に伴って500人規模の退職を募ったほか、リコーは国内で1000人程度を募集している。
 このほか、富士通は間接部門の幹部社員を対象に希望退職を募り、約200億円を費用計上した。武田薬品工業は勤続3年以上の国内従業員を対象に、人数を決めずに募集。非上場企業でも、経営再建中の東芝が5月に最大4000人の人員削減を発表した。 

(ニュース提供元:時事通信社)