日本が政府開発援助(ODA)を始めて今年で70年となる。ODA予算が減少する中、政府は相手国の要請を待たずに提案する「オファー型」協力を推進し、民間資金の活用にも取り組む。新興・途上国「グローバルサウス」との連携強化を図りつつ、日本の経済成長や重要資源のサプライチェーン(供給網)強化といった国益も追求する。
 林芳正官房長官は7日の記者会見で、グローバルサウスの国々が「支援の対象から、今後の国際社会を担うパートナーになっている」と指摘。日本として「次のフェーズ(局面)に向けた新たな取り組みを検討していく必要がある」と述べた。
 日本は1954年10月6日、途上国を支援する国際機関「コロンボ・プラン」への加盟を閣議決定し、ODAを開始。経済成長を背景に89年に米国を抜き実績額で世界最大となった。しかし、日本経済の停滞を受け、97年の1兆1687億円をピークに減少し、今年度は5650億円だった。
 背景には予算の使い道に国民の厳しい目が向けられ、効果的な運用が求められていることもある。「ばらまき」批判も根強い。
 ODA改革を進める政府は昨年6月に改定した開発協力大綱にオファー型の強化を明記。日本の強みを生かした協力メニューを提案し、途上国の課題解決を目指しつつ、日本企業の参入を促す狙いもある。外務省幹部は「従来の『あげる』『もらう』という関係ではなく、双方の社会課題の解決につながる」と述べ、国益重視の姿勢を強調した。
 政府は既に案件の具体化に着手。中国が影響力を強めるカンボジアとは昨年12月にデジタルインフラに関する協力メニューで合意した。データセンター整備や通信ネットワーク高度化、人材育成などにつなげる。東アフリカ沖の島国マダガスカルとは今年5月にニッケル鉱山の生産技術向上と周辺インフラを含む広域都市開発などの協力で一致した。
 外務省内の体制強化にも取り組む。今夏に国際協力局内に「開発協力連携室」を新設。関係省庁や企業・団体との窓口役として、協力メニューの立案を主導し、対象国との調整も担う。
 政府は不足する予算を補うため、急増するグローバルサウスへの民間投資にも着目する。3月に有識者会議を設置し、民間資金を開発協力に誘導するための具体策の検討を進めている。投融資で持続可能な社会づくりを目指す「サステナブルファイナンス」の活用を軸に、月内にも提言をまとめる。 

(ニュース提供元:時事通信社)