総延長約74万キロに及ぶ全国の水道管。このうち、2割を超える約17.6万キロが40年の法定耐用年数を迎えている。耐用年数に達する管路は今後急増し、2042年度時点で約7割となる見通しだ。一方で、人口減少や節水により料金収入が減少傾向にある中、更新に必要な財源の確保は厳しさを増しており、対策は思うように進んでいない。国土交通省は、同様に老朽化が進行する下水道を含め、優先順位を付けながら対応を急ぐよう自治体に求めている。
 埼玉県八潮市で1月に発生した道路陥没は、下水道管の破損が原因とみられている。国交省道路局の調べでは、上下水道に起因する道路の陥没は、22年度に1550件発生。水道管破裂による冠水も頻発している。昨年の能登半島地震でも、耐震化していない設備を中心に被害があり、広範囲で断水が続いた。
 背景にあるのは老朽化だが、管路の更新は追い付いていない。1年にどれだけ更新したかを示す割合を見ると、22年度時点で水道は0.64%、下水道は0.15%にとどまる。上下水道は料金収入で維持管理や改修の経費を賄うのが原則だが、人口減少による使用量の低下に加え、資材価格の高騰もあって経営環境は厳しく、更新費用を捻出するのが容易ではない。
 そこで各地の自治体では、大幅な料金改定に踏み切る動きが出てきた。埼玉県本庄市は、今年4月から水道料金を約40%引き上げた。担当者は「予算不足で管路更新がなかなか進まない。段階的な増額ではなく、スピード感を重視した」と説明。今後5年間で管路の耐震化を集中的に進めるほか、減少する人口に見合うよう施設の統廃合にも取り組む。能登地震の被害の深刻さも記憶に新しく、「やむを得ない」と理解を示す市民が多いという。
 国交省も、避難所や病院といった災害時の重要拠点につながる管路から耐震化するなど、優先順位を付けた計画的な更新を呼び掛けている。上下水道の一方でも破損があれば、水を通すことができないため、一体的な対策を財政面で支援している。 
〔写真説明〕埼玉県八潮市で発生した道路陥没現場=1月30日

(ニュース提供元:時事通信社)