2024/06/03
防災・危機管理ニュース
【リビウ(ウクライナ西部)時事】ロシアの侵攻を受けるウクライナ軍が反転攻勢を始めて、4日で1年を迎える。東・南部に広がる占領地にくさびを打ち込む狙いだったが、強固な防衛線に阻まれ約半年で頓挫。ウクライナの兵器・兵士は損耗し、ロシアが戦況の主導権を握っている。劣勢打開が見通せないままの戦争長期化は、ゼレンスキー大統領に政治的打撃を与えている。
北東部ハリコフ州では5月10日、ロシア軍が新たな地上侵攻に着手。ウクライナ軍は東部ドネツク州の前線から転戦を余儀なくされ、各地で次々と集落を奪われている。南部ザポロジエ州の激戦地ロボティネも、5月中旬に奪い返された。
「今年は新たに880平方キロを掌握した」「ハリコフ州でウクライナ軍は8~9キロ後退した」。5月に就任したロシアのベロウソフ国防相は同31日、戦果を誇らしげに報告した。
新たな地上侵攻前の5月3日にショイグ国防相(当時)は、今年に入り547平方キロを制圧したと発表していた。これらの説明が事実なら、ロシアの占領地は1カ月足らずで333平方キロも増えた計算。面積でみれば、ウクライナが反転攻勢開始から半年間で解放した分は、既にロシア側が再び占領したもようだ。
ゼレンスキー政権にとって、ロシア本土を攻撃しない約束で西側諸国から提供された兵器について、ハリコフ州から国境を越えた反撃に使う許可を取り付けるのが課題だ。これまでに米国が部分的に認める方針を示したほか、英仏独も容認する姿勢を明らかにした。
ウクライナ軍は深刻な兵員不足にも見舞われている。4月に動員対象年齢の下限を27歳から25歳に引き下げる法律が成立したものの、際限なき動員は政権支持率に響きかねない。
5月17日には受刑者の釈放・動員を可能にする法律を成立させ、ウクライナ側によると、既に800人近くが訓練に向かった。戒厳令延長を理由に大統領選を先延ばしする中、元受刑者の活用には追加動員のショックを少しでも和らげる意図があるとみられる。ロシアも元受刑者による突撃部隊を編成している。
〔写真説明〕戦死者のひつぎを担ぐウクライナ兵=5月2日、西部リビウ(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
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