2014/03/07
防災・危機管理ニュース
千代田区が帰宅困難者対応訓練を実施
千代田区と区内の地区帰宅協力者困難者対策地域協力会は3月7日、帰宅困難者対応訓練とシェイクアウト(一斉防災)訓練を実施した。
都市直下型地震が発生した場合、千代田区では交通機関の停止などにより、昼間人口約85万人のうち50万人が帰宅困難者になるとみられる。東日本大震災時には区内において震度5強を観測。
区の方針は一斉帰宅を抑制するものだったが、通信機能や公共機関の停止などで企業の従業員らが一斉に帰宅行動を開始。帰宅困難者が多数発生し、大学の施設などに殺到するなどの混乱が生じた。訓練では、帰宅困難者が発生した場合の官民の支援体制を確立させるとともに、体制そのものについて検証することが目的。

「地震が発生しました。社員の皆さんはすみやかに机の下に避難してください」。担当者の掛け声とともに、セブン&アイ・ホールディングス(東京都千代田区)では社員が一斉に机の下に避難した。千代田区が呼びかけたシェイクアウト訓練だ。シェイクアウト訓練とは2008年にアメリカで始まった訓練で、ホームページなどを通じて防災の普及・啓発を図り、同時刻一斉に参加者全員が机の下に隠れるなどの身の安全を確保することにより、家庭や会社などの日常の防災対策を確認するというもの。今回千代田区では約2万5000人が参加したとみられている。「低く(Drop)、頭を守り(Cover)、動かない(Hold on)」という簡単な動作を徹底するため、訓練のハードルも低く参加がしやすい。
続いて、区内の各地で帰宅困難者避難訓練が行われた。東京・四ツ谷駅にほど近い上智大学の真田掘運動場では、学生や周辺企業から約60名が参加して訓練を開始した。

「帰宅困難者を一刻も早く安全な所へ送り届けるのが重要です。むやみに移動を開始せず、まずは安全な建物で待機します」と話すのは四ツ谷駅周辺帰宅困難者対策地域協力会で座長をつとめるセブン&アイ・ホールディングス総務部FC渉外の越智英幸副主事。運動場は帰宅困難者の安全を一時的に確保する災害時退避場所であるため、デジタル式無線で大学からの受け入れ可能であるという連絡が入ると、避難者は運動場から上智大学内の一時受け入れ施設に誘導された。施設に到着すると名簿に氏名を記入して食料などの備蓄品を受け取った後、所定の場所で公共機関やライフラインに関する情報提供を受けた。「災害時退避場所」「一時受け入れ施設」「避難所」など、一般の生活者には同じように思える言葉にも細かい違いがあることを理解することが災害時では困難を防ぐ第一歩になる。参加していた大学生は「東日本大震災の時は何もわからずに学校にいて怖かった。こうやって訓練を受けて避難の流れがわかると安心します」と話す。千代田区によると、区内では東京・有楽町駅周辺地域、富士見・飯田橋周辺地域、秋葉原駅周辺地域らの地域協力会や教育機関、警察などが中心となり、区内10カ所において避難訓練が実施され、約1000人が参加したとみられる。

防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方