宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の宙組女性団員が急死した問題で、歌劇団や運営元の阪急電鉄、阪急阪神ホールディングス(HD)の幹部が28日、大阪府豊中市で記者会見し、女性への14項目にわたるパワーハラスメントを認める合意書を遺族と締結したと発表した。

 会見に先立ち行われた調印の場では、グループトップの角和夫阪急阪神HD会長が遺族に謝罪。パワハラに関与した上級生が書いた謝罪の手紙も渡したという。慰謝料など解決金として相当額も支払うとしている。

 同HDの嶋田泰夫社長は会見で「すべての責任は劇団にある。痛切に反省している」と述べた。

 合意書では上級生や、宙組の運営に関わるプロデューサーらから女性に対し、厚生労働省の指針に該当するパワハラ行為があったことを明記。上級生が2021年8月に女性の髪をヘアアイロンで巻く際にやけどをさせたことや、同じ頃、女性に人格否定のような言葉を浴びせたことなど14項目を列記した。

 同時に、再発防止の取り組みも公表。既に実施している年間興行数の削減などに加え、伝統的なしきたりや指導方法の見直しなどに取り組む。

 また、加藤治彦元国税庁長官を座長に、内部統制の専門家や弁護士らでつくるアドバイザリーボードを4月から設置。劇団運営に助言を求める。

 女性団員は昨年9月30日、自宅マンション敷地内で死亡しているのを発見された。歌劇団は、長時間にわたる指導や稽古などで「女性に強い心理的負荷」がかかり、安全配慮義務を果たしていなかったと認める一方、ハラスメントは否定する調査報告書を11月に発表。遺族側は上級生らからパワハラがあったと主張し、両者が代理人弁護士を通じて協議を続けていた。 

◇団員急死問題の経緯

2021年8月    宙組女性団員が上級生の扱うヘアアイロンでやけど

  23年2月    女性へのいじめがあったと週刊文春が報道

     9月29日 宙組公演が開幕し、女性も出演

       30日 女性が自宅マンション敷地内で死亡しているのが発見される

    10月 1日 宙組公演中止。以降、現在まで宙組の全公演が中止に

        7日 歌劇団が調査チーム設置。いじめ報道は否定

    11月10日 遺族側弁護士が会見し「過重労働とパワハラがあった」と主張。謝罪と補償を求める

       14日 歌劇団が調査報告書を公表。過重労働と管理責任を認め、パワハラは否定

       24日 歌劇団、遺族双方の代理人弁護士が面談交渉を開始

    12月    遺族側が、15項目のパワハラがあったとする意見書を5日付で歌劇団側に提出

       18日 歌劇団が調査報告書をホームページから削除

 24年 3月28日 歌劇団側が上級生らによるパワハラを認めて謝罪し、遺族側と合意文書締結(了)

宝塚歌劇団の女性団員が急死した問題について、記者会見で遺族側代理人が配布した遺族の思いや劇団との合意内容が書かれた文書=28日午後、厚生労働省

 

(ニュース提供元:時事通信社 2024/03/28-20:48)

(ニュース提供元:時事通信社)