上段:左より、亀井氏、戸出氏、深山氏、上田氏 下段:左より、松下氏、長谷川氏、大羽氏

エマージング・リスク(emerging risks:新興リスク)と呼ばれる、これまであまり認識されていなくて急に出現するようなリスクへの関心が世界的に高まっている。10月にはエマージング・リスクの国際規格「ISO31050」が発行された。今なぜエマージング・リスクへの関心が高まっているのか、組織はどう対応していけばいいのか、日本リスクマネジメント学会(理事長:亀井克之関西大学教授)関東部会の会合で、会員に聞いた。

ISO31050では、エマージング・リスクを①組織がこれまでに認識したことも経験したこともないようなリスク、②既存の知識が通用しない、新たな、馴染みのない状況におけるリスク、③著しく進化するリスク、④システミック・リスク(連鎖リスク)、⑤上記新興リスクの組み合わせ―と定義した。

同学会で会長を務める上田和勇氏(専修大学名誉教授)は、エマージング・リスクが注目されている理由について「新型コロナウイルスのように短期間に影響が一気に広がるようなことが起きやすくなっている。AIにしても瞬く間に世界全体に広がった。こうした波及速度が非常に早まっていることに多くの人が危機感を感じているのではないか」と語った。      

株式会社ミヤマコンサルティンググループ代表取締役の深山敏郎氏は「ロシアのウクライナ侵攻などは一部の専門家は予測していた事態ではあったが、一般の多くの人にとって未知の事態となった。さまざまな情報が氾濫している今、自分の関心事以外に人々は興味を持たなくなっている。こうした人々の情報への偏重が、未知という状況を生みやすくしているのではないか」と、エマージング・リスクが発生する背景について補足した。