写真を拡大東京都総合防災部情報統括課長齋藤 實氏

■初動の重要性

2009年4月24日、金曜日の11時45分頃、東京都総合防災部情報統括課長の齋藤實氏は知人から1本の電話を受けた。内容は、「メキシコでインフルエンザが発生し、新型ではないか」というもの。齋藤氏は、直ちに、テレビニュースで事実関係を確認し、危機管理監、福祉保健局感染症対策課長、東京都健康安全研究センター所長らに連絡。この情報伝達により、都では、翌25日(土)から新型インフルエンザに関する相談窓口を設置するとともに、健康安全研究センターでは24時間体制のサーベイランス(監視体制)をスタートさせた。

「危機というのは初動が重要。そのためには第1報を誰から誰にどう伝えるのかを事前に決めておき、確実に伝えられる体制を整えておくことが不可欠。24日のうちに連絡することができたのは、たまたまタイミングが良かったからではない。関係者の連絡先は携帯電話にすべて登録している。どんな些細な事案でも、朝でも、夜中でも連絡するし、逆に、連絡が入ればどのような情報にも応じる。それが、危機管理担当としての心得」と、齋藤氏は語る。

■事前対策のポイント

都総合防災部は、危機事案発生時の初動から応急対策、広報対応、復旧に至るまで、すべての中心的役割(対策本部の事務局機能)を担う。危機事案が発生すると、指令官(危機管理監)をトップに指令室、総務班、情報統括班などの班組織が編成され、連携を取りながら対応にあたる。指令室の下には、庁内の各局や防災関係機関などとの調整を行う調整班、防災システムの運営・維持にあたる設備班、区市町村からの被害状況等を収集する情報班、そして広報班が設けられる(図表1)。各班とも、班長、副班長および主要メンバーが、直ちに都庁舎に参集できるよう、徒歩10分~30分圏内にある災害対策住宅で生活している。

広報班は、本部に集められた膨大な情報の中から、人的・物的被害や復旧状況などに関する事項をとりまとめ、プレス発表、報道機関などからの問い合わせ対応、さらに避難勧告に関する情報を放送局に要請するなど、市民生活に直接影響を及ぼす重要な役割を持つ。そこで「広報班活動マニュアル」をつくり、危機発生時の連絡網(担当者名、自宅・携帯電話、メールアドレスを記載)やプレス発表手順、さらに、誰が、いつまでに、何をするか、その際の留意点、ルールなどを分かりやすくまとめ、確実に対応できる体制を整えている(図表2:プレス発表手順、図表3:広報班の役割分担)。