2023/06/18
事例から学ぶ

アルミニウム総合メーカーのUACJは、グループ会社を含め約1万人の従業員が国内外で活動する。同社がリスクマネジメントの強化に乗り出したのは2019 年。リスクマネジメント部と各事業・本部に配置されたリスクマネジメント推進担当者らが中心となり、グループの重要リスクと部門固有のリスクに対応する体制を構築した。経営レベルで戦略的にリスクを管理していく仕組みが整いつつある。
UACJ
東京都
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.39(2023年6月号)に掲載したものです。
❶こまめにリスクを議論
・リスクマネジメント体制の強化に伴い、それまでは年2回程度開催していたCSR委員会でのリスクの審議を、月に2回開催される経営会議で随時議論する形に変更。よりタイムリーにリスクに対応できるようにした。
❷各部にリスクマネジメント推進担当を配置
・各事業組織やコーポレート組織、グループ会社に、リスクマネジメント活動の推進役となるリスクマネジメント推進担当者を配置。彼らが各組織の責任者と共に、組織内でのリスクマネジメントを推進する事務局のような役割を果たしている。
❸ゴールはリスクマネジメントの浸透
・全社的にリスクマネジメントを浸透させていくため、研修や社内広報など、リスクやリスクマネジメントを考える機会を増やす仕組みを開発中。
UACJ 経営戦略本部リスクマネジメント部長の小野田範子氏は「古河スカイと住友軽金属工業が統合してUACJ が発足してから5年という段階で、リスクをコントロールできる力を強化したいという社長の想いから本格的なリスクマネジメント活動がスタートしました」と振り返る。
折しも、当時は2017年にCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)が全社的リスクマネジメントを更新し、続いて2018 年にリスクマネジメントのISO31000 も改訂され、リスクマネジメントに新たな潮流が生まれていた。
2018 年度に各部門単位で業務上のリスク管理を実施するボトムアップの仕組みを見直し、グループとしての重要なリスクを可視化。経営層も加わって、リスクを優先順位付けして対処する仕組みの検討・試行に着手した。2019年4月には法務部内にリスクマネジメントグループを新設、UACJグループとして統合されたリスクマネジメントの仕組みの構築に取り組みはじめた。専任の担当は小野田氏ひとりだった。
リスクマネジメントの強化とともに所管も見直した。2020年度には経営戦略とリスクマネジメントの融合を目的に、経営戦略部リスクマネジメントグループに移管。2021年度には格上げされ独立した経営戦略本部リスクマネジメント部が設立された。現在は7人(専任5人)が従事する。
同部ではリスクマネジメントチームとBCM・危機管理チームとに担当が分かれているが、垣根を越え、協力しながら取り組んでいるという。
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