2022/10/19
事例から学ぶ

前身である大和工業の設立から数えて今年で創業80 周年を向かえたセイコーエプソン(長野県諏訪市、小川恭範代表取締役社長CEO)。諏訪湖と共に歩みを進め、環境活動に積極的に取り組む同社がTCFDに賛同したのは2019年だった。翌2020年8月に2℃と4℃シナリオの定性分析を実施し、気候関連リスクと機会が事業に与える財務影響度を評価。2℃シナリオの分析結果を開示した。同社の気候変動対応の取り組みを紹介する。
記事中図表・写真提供:特記なきものはセイコーエプソン
セイコーエプソン
長野県
※本記事は月刊BCPリーダーズvol.31(2022年10月号)に掲載したものです。
サステナビリティ活動の推進体制
TCFD 提言にもとづくシナリオ分析を踏まえ、セイコーエプソンは2020 年、経営戦略に関する重大な決断を行った。気候変動リスクを最小化し事業機会と社会貢献の拡大が期待できる1.5℃シナリオを前提した環境ビジネスに注力する方向へと、経営戦略の舵を切ったのだ。
同社サステナビリティ推進室・エキスパートの増澤孝介氏は「このときが分岐点だった」と振り返る。
エプソンでは、社長の諮問機関で執行役員などの経営層が参加する「サステナビリティ戦略会議」がグループ全体のサステナビリティ中期戦略を策定し、活動のレビューを行う。気候変動に関する重要事項も、同会議で議論し、取締役会に報告する。
その下には、関連部門の主管部門長をメンバーとする「サステナビリティ推進会議」がある。ここではESGの専門事項を協議し、検討を行う。
こうした活動の管理を行うのが、2020 年4月にCSR 推進室を改組して設置されたサステナビリティ推進室だ。室長は取締役専務執行役員が務め、サステナビリティ戦略会議とサステナビリティ推進会議の事務局を担当する。
加えて、TCFDを含めた環境に関する社内の推進組織として、2021年3月に環境戦略定例会を新設した。これは、全社的・事業横断的に環境活動をビジネスとして推進するための組織。その下には「脱炭素」「資源循環」「お客様のもとでの環境負荷低減」「環境技術開発」をテーマに分科会が設置されている。こちらの事務局は、CS品質・環境企画部が務める。
同社は以前から脱炭素や資源回収など環境に関わる取り組みを進めてきたが、TCFD 賛同表明を機にそれらにも弾みがついた。CS品質・環境企画部部長の木村勝己氏は「サプライヤーエンゲージメントやグリーン物流など、当社だけでは完結しない施策の検討が加速している」と話す。
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