2015/01/20
C+Bousai vol2
阪神・淡路大震災での対応
「最も住民が避難しやすいところは小学校。小学校が一番コミュニティが発達して、民主主義的な運営をしている。東日本大震災でも小学校が避難所になったところが多かったが、それらはすべて阪神・淡路大震災の教訓からだ」と話すのは、長田区役所で震災の対応にあたった清水誠一氏。現在は区役所内にある「人・街・ながた震災資料室」で研究員を務め、震災の経験を伝えている。
阪神・淡路大震災では、地元の真野小学校に震災から3日目の1月19日に各自治会関係者による災害対策本部を設置。16人の町の自治会長が集まり、地区として物資や食料の配給などを行うことを決めた。震災3日目にはすでに食料の不足が発生し、町全体では十分な数が確保できないことがわかったからだ。被災を免れて自宅に待機している住民の分も含め、1日2回朝夕5000食を確保する方針を立てた。物資は本部管理で一元化することで、平等性を担保した。幸いなことに電気は震災当日の午後には復旧し、水も地域の井戸水などが飲料水として開放されたため、深刻な事態には陥らなかった。ただし、井戸などの水源から自分たちで水を運ばなければいけなかったため、高齢者にはつらい作業だったという。また、震災からほどなく、ミニコープ真野店が強盗に襲われる事態が発生。各自治会では自然発生的に夜警体制を整えた。このような取り組みが迅速に行われたのも、これまでの地区のコミュニティ活動が大いに役に立っているという。
震災から2カ月が経過した3月、清水氏とボランティアらで作成したのが復興まちづくりニュース「真野っこガンバレ!!」だ。発行を開始してから5年間、週刊で真野地区全戸に配布され、176号まで続いた。全世帯に配布するのは、各自治会の役目となった。震災から1年後に、「真野っこガンバレ!!」の縮刷版が発行された。地震発生当日から発行の3月までの50日間の詳細な記録も掲載した、当時を知るための貴重な冊子として現在も防災現場で活用されている。

C+Bousai vol2の他の記事
- 特別対談|意欲的に取り組める防災教育「正解のない」問題を考える 災害経験を風化させないため
- 「60分ルール」で津波から守る 訓練のリアリティを追求する (神戸市長田区真陽地区)
- 若い世代も巻き込んだ防災活動 子どもが喜べば親も来る (神戸市須磨区千歳地区)
- コミュニティが町を救う 震災前に30年間のコミュニティ活動 (神戸市長田区真野地区)
- 毎月定例会毎年訓練と見直し (神戸市中央区旧居留地連絡協議会)
おすすめ記事
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
-
新任担当者でもすぐに対応できる「アクション・カード」の作り方
4月は人事異動が多く、新たにBCPや防災を担当する人が増える時期である。いざというときの初動を、新任担当者であっても、少しでも早く、そして正確に進められるようにするために、有効なツールとして注目されているのが「アクション・カード」だ。アクション・カードは、災害や緊急事態が発生した際に「誰が・何を・どの順番で行うか」を一覧化した小さなカード形式のツールで、近年では医療機関や行政、企業など幅広い組織で採用されている。
2025/04/12
-
-
-
防災教育を劇的に変える5つのポイント教え方には法則がある!
緊急時に的確な判断と行動を可能にするため、不可欠なのが教育と研修だ。リスクマネジメントやBCMに関連する基本的な知識やスキル習得のために、一般的な授業形式からグループ討議、シミュレーション訓練など多種多様な方法が導入されている。しかし、本当に効果的な「学び」はどのように組み立てるべきなのか。教育工学を専門とする東北学院大学教授の稲垣忠氏に聞いた。
2025/04/10
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方