首都直下地震の被災シナリオから考える通信障害とIT継続

画像を拡大 情報通信環境に依存する社会。利用停止の影響は大きい(写真:写真AC)

インターネットが使えなくなる

KDDIで発生した通信障害の影響は、携帯電話やデータ通信にとどまらず、産業・生活インフラ全般に波及。医療、物流、金融、エンタメなど、幅広い分野に混乱を引き起こした。「デジタル化社会」の弱点が浮き彫りになるとともに、情報通信システムがいまや経済機能・社会機能の根幹をなすことが明確になったといえる。

今回の事象は、通信ネットワークがつながらなくなったときに何が起きるかを一時的に見せつけた。しかし、災害時にはそれがより大規模に発生する。東京都がこのほどまとめた首都直下地震の新たな被害想定からもそれは明らかだ。初動・復旧の起点となる情報が絶たれる影響は計り知れない。

首都直下地震で起き得る通信ネットワークの被災シナリオを、下記に要約する。

電柱など通信ケーブルの寸断によって、数%の地域では固定電話、携帯電話、パケット通信が不通に。交換機が入る通信ビルや基地局が被災すると不通エリアはさらに拡大し、災害時優先電話も使えなくなる可能性がある。また利用可能地域であっても、輻輳によって音声通話はつながりにくく、メールやSNSもアクセスの集中で大幅な遅配が発生する。

停電が発生した地域では、非常用電源により通信ビルや基地局の機能は維持されるも、商用電源を利用する通信機器は使えず、充電しなければ端末も使えない。停電が長引く地域では、通信ビルや基地局でも非常用電源のバッテリーが枯渇、不通状態が拡大もしくは長期化する。

インターネットも電柱の倒壊などで通信ケーブルや携帯基地局が被災した地域では使えず、通信ビルや中継伝送路が被災した場合は利用停止地域が拡大。利用可能地域であっても、サーバーへのアクセスが集中すると遅配が発生する。また、停電が長期化すると携帯基地局が機能せず、利用停止エリアが拡大する可能性がある。

このように、エリアによっては発災直後からインターネットを含む通信が停止、かつ、停電などインフラ復旧の状況次第ではその状態が長期化する。10 年前より通信環境が格段に進化している分、IT依存度は大きく、その影響も大きい。