2022/03/14
事例から学ぶ

東日本大震災から11年、あらためて身のまわりの防災を見直したい。南海トラフ地震で最大震度7の揺れと津波が想定されている和歌山県では昨年、震度5弱の地震を2回観測、今年に入ってからはトンガの海底火山噴火による津波もあった。いずれも大きな被害は出なかったものの、いざというときへの備えは当然緩められない。全国に先駆けた同県の取り組みを、津波対策を中心に聞いた。
和歌山県
❶円滑な津波避難へ情報収集・伝達手段を多重化
・ハード整備で津波避難困難地域の解消を図りつつ、完成までのタイムラグを埋めるソフト対策を強化。特に津波情報は何重もの手段で迅速な収集・伝達、共有を図る
❷人的資源を総動員しての初動・復旧支援
・人材が少ない市町村は災害時に役場機能が大幅に低下すると想定。自ら情報を取りに行くことで対応をカバーする「災害時緊急機動支援隊」をあらかじめ組織
❸災害に見舞われる前の復興計画事前策定を支援
・災害に見舞われた後で復興計画を立てていては、混乱のなか、迅速な立ち直りやその後のまちづくりが後手にまわる。市町村の復興計画の事前策定を県をあげて支援
南海トラフに近い紀伊半島は、地震発生から津波到達までの時間が短いという特性がある。和歌山県沿岸部は東海・東南海・南海3連動地震が起きた場合、最も短い地域で津波到達まで5分、最大クラスの巨大地震の場合は最短3分だ。逃げ切ることができない「津波避難困難地域」がどうしても発生する。
和歌山県が2014 年に改定した「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」は、この津波避難困難地域の解消が最大のポイントだ。24 年までにすべての困難地域を解消するとし、県と市町村とが連携して堤防や避難路、避難タワー・ビルなどのハード整備を強力に推進。3連動地震による津波避難困難地域22 地区のうち16 地区を、最大クラスの巨大地震による津波避難困難地域61地区のうち10 地区を、すでに解消した。
「できる限り早く備えるに越したことはないが、ハード整備は時間がかかる。ゆえに、ソフト対策の組み合わせが欠かせません。リソースを総動員して対応し、やがてハードが完成してくることで、より強固なシステムになる」と、防災企画課企画班の瀬川尊貴班長はいう。
最も重要なソフト対策が情報だ。
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