2022/02/07
事例から学ぶ
コスモエネルギーグループは大規模災害時でも石油製品の安定供給を継続すべく、製油所からサービスステーション(SS)までの「系列サプライチェーンBCP」を構築。「首都圏・関西圏での震度6弱以上の地震」「大津波警報」「噴火情報」の発生時にはコスモエネルギーホールディングス、コスモ石油、コスモ石油マーケティングの主要3社に危機対策本部を設置し、連携を図りながら初動対応と事業継続にのぞむ体制だ。首都圏の本社機能が喪失した場合は大阪の拠点に臨時対策本部を立ち上げるバックアップ体制も備え、毎年の訓練でオペレーションを確かめている。コスモエネルギーホールディングス(東京都港区、桐山浩社長)に取り組みを聞いた。
コスモエネルギーホールディングス
(コスモエネルギーグループ)
東京都港区
❶大規模災害に備える系列サプライチェーンBCP
・製油所からSSまでの系列サプライチェーンBCPを構築。大規模災害時は主要3社にそれぞれ危機対策本部を設置し、連携しながら初動対応を行い、事業継続を図る
❷代替措置と企業連携で重要機能をバックアップ
・代替措置や企業連携により通信手段や復旧手段、輸送手段などを複層的に用意。指示命令系統も多重化し、一つが断たれても重要機能がストップしないようにする
❸本部訓練・臨時本部訓練を積み重ね対応力をアップデート
・東京での危機対策本部訓練と大阪での臨時危機対策本部訓練を毎年実施。導入したITツールを実際に使いこなせるかなど、常に課題の検証を行って対応力をアップデートする
石油製品は電気・ガス、水、食料などと並び、人の生活と経済を支える重要なライフライン。災害時にいかに安定供給を確保するかは防災上の最重要課題だ。その公共性の高さから、石油元売事業者は「指定公共機関」に位置付けられている。
海外含め約30 社の関連企業を傘下に持つコスモエネルギーグループも、製油所からサービスステーション(SS)までの「系列サプライチェーンBCP」を構築。大規模災害時には主要3社に危機対策本部を迅速設置し、BCPを発動して対応にあたる。東日本大震災の翌年には、地震・津波に備える事前対策や初動時のアクションなどを具体的に定めたBCPマニュアルも策定した。
BCPにもとづく事前対応を強化
対象となる大規模災害は主に「首都圏・関西圏での震度6弱以上の地震」「大津波警報の発出」「噴火情報の発出」の3つ。これらに際しては自動的にBCPを発動し、コスモエネルギーホールディングス、コスモ石油、コスモ石油マーケティングの本社にそれぞれ危機対策本部を設置、連携しながら初動対応と事業継続に努める。
「実質的には主要3社を対象とした地震BCP。今後は被害想定エリアを拡大し、ハード対策や被災時のオペレーションの強化をグループ全体で進めていく」と、コスモエネルギーホールディングスサスティナビリティ推進部ESG 推進グループの児玉孝樹グループ長は説明する。
一般的に石油製品は製油所で精製され、油槽所で保管、そこから各SSに流通する。コスモ石油所有の製油所は千葉、三重、大阪に3カ所。いずれも首都直下地震、南海トラフ地震の被害想定エリアにあたり、BCPで規定する事前対応に従って非常用電源などのハード対策を先行して推進、緊急時オペレーションの体制を整えてきた。
一方、供給拠点となる油槽所は全国に約20カ所、コスモ石油マーケティングが所管するSSは実に約2700カ所もある。これらも系列BCPの対象に入っているものの、巨大災害の被害想定エリアから外れている拠点などについては体制の整備を進めているところだ。
「非常用電源の整備は製油所で完了、油槽所も近くすべて終了する。その後は製油所並みに対応できるよう、実際に津波が発生したときの避難確認マニュアルや出荷再開時の点検マニュアル、応援要請のフローなどを徹底していきたい。各地のSSについても、いわゆる『住民拠点SS』から、非常用電源の整備を順次進めている」
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