会見に弁護士を同席させる場合は全体の進行や組み立て、レイアウトの工夫が必要(写真:写真AC)

「弁護士は記者会見に同席させていいでしょうか?」という質問をよく受けます。同席してもいいのですが、見せ方、レイアウトのテクニックを含めた全体の進行、組み立ての工夫が必要です。少なくとも、並んでの着席は避ける。特に会社のトップや議員といった方々はご自身で説明するべき立場ですから、弁護士にいちいち聞くと印象が悪くなります。

ただ、一個人や顔を出さない場合はこの限りではなく、弁護士が代理で記者会見を開くことはあるだろうと思います。例えば日本大学アメフト部の反則タックル事件での宮川君の会見は、弁護士が別席で最初に記者会見の目的、これまでの経緯をていねいに説明し、素晴らしいサポートでした。

今回は最近の会見から、弁護士同席の失敗事例を解説します。木下富美子都議会議員の辞職会見です。

反省から一転し恨み節と議会批判

木下都議は無免許運転を繰り返したあげく、選挙前日に事故を起こしたにもかかわらず、それを公表しないまま当選。これまで議員辞職勧告を2度も受けるなど批判を浴びた末、11月22日夜、辞職の記者会見を開きました。

猛省の末、再出発するという言葉が何度もありましたが、信頼回復の第一歩につながる会見だったでしょうか。残念ながらNOといわざるを得ません。起こしてしまったことにどう向き合うのかの「姿勢」を見せるクライシスコミュニケーションとして成功したとはいえないと思います。

問われているのは「姿勢」であるのに、「法的問題」の視野しかなかった点が失敗の原因です。同席した弁護士の余計な言葉がダメージを深くしてしまいました。

最初は真摯な反省の姿勢を示すも(写真:写真AC)

出だしは悪くありませんでした。木下氏は、無免許運転した上に事故を起こした「事実」に向き合い、決して許されないこと、議員の資質に欠けるといった批判は当然と「猛省」し、順法意識が弛緩していたことを「後悔」。申し訳ないという気持ち、二度と運転をしない決意、罪を償うことも表明しました。

ここまではよかった。しかし、徐々にトーンが変わっていきます。ひとり親支援、弱い方々への支援といった実績のアピール。あれ、どうしたのだろうと思っていたところ、最後は「議員辞職勧告に法的拘束力がないにもかかわらず、仕事をさせてもらえない」と恨み節となって、せっかくの最初の謝罪の印象が薄まってしまいました。

次第に恨み節と攻撃に(写真:写真AC)

しかも、同席した弁護士が追い打ちで激怒のコメント。「議員辞職勧告に法的拘束力がないにもかかわらず、議会が彼女に仕事をさせないといったいじめ行為を行った」と、東京都議会への抗議で締めくくられました。つまり、冒頭の謝罪が議会批判で終わったのです。そのため「あれ、この会見で木下氏は何を言いたかったのか」となりました。

謝罪、恨み節、攻撃と、3つのメッセージでは受け取り手は混乱してしまいます。